ピーラーと包丁はどっち?皮むきを個数と面の長さで決める基準

まな板の上に並んだ包丁とピーラー 包丁の選び方

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静岡で料理歴15年のコウスケです。台所に立っていて、じゃがいもを1個だけむくのに引き出しからピーラーを出すべきか、それとも手に持っている包丁でそのままいくべきか、一瞬迷ったことはないでしょうか。私は何年も迷い続けていました。

調べてみると、どの記事も「ピーラーのほうが速い、薄い、安全」で話が終わっています。でも実際に台所で困るのはそこではありません。ピーラーが速いのは知っている。知りたいのは、目の前のこの1個に対して今どっちを手に取るのが正解なのか、です。

この記事では、食材の種類ではなくむく個数と、刃が走る面の長さで二択を割る考え方を書きます。両方持っている前提で、その場の判断を速くするための記事です。

  • 1個か2個なら包丁が速い理由は、道具を出して洗う手間にある
  • 3個以上、または長い面が続くならピーラーに持ち替える
  • むく厚みを自分で決めたい食材は包丁が向く
  • 面取り・桂むきなど、ピーラーでは構造的に届かない作業がある
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ピーラーと包丁はどっちが速いのかを条件で分ける

速さの話をするとき、多くの人は「刃が食材の上を走っている時間」だけを比べています。その区間だけならピーラーが速いのは間違いありません。ただ台所で実際にかかっている時間は、それだけではないはずです。引き出しを開けて、探して、使って、洗って、水気を拭いて、戻す。この前後の時間を足すと、順位が入れ替わる場面が出てきます。ここではその境目を、個数・厚み・持ち方・食材の形という4つの角度から見ていきます。

まな板の上に並んだ包丁とピーラー
どちらを手に取るかは、食材の種類より「何個むくか」で決まる

ピーラーと包丁でどっちが早いかは個数で変わる

私が長いこと見落としていたのは、道具を出す時間と片づける時間でした。ピーラーは引き出しの中で他の調理器具に紛れています。探して取り出すのに数秒、使い終われば刃の隙間に詰まった皮を落として洗い、水気を拭いて戻すまでにもう少しかかります。合計すると、だいたい30秒から1分ほどの固定費が毎回発生している計算になります。

一方、包丁はどうでしょうか。料理を始めた時点で、たいていすでにまな板の横に出ています。玉ねぎを切り、肉を切り、そのついでにじゃがいもの皮をむく。この流れなら追加で出す道具はゼロで、洗い物も1本増えません。つまり包丁側の固定費はほぼゼロということになります。

ここに個数を掛けてみると、境目が見えてきます。皮むき1個あたりの実作業でピーラーが包丁より稼げる時間は、体感で10秒前後といったところです。じゃがいも1個なら、稼いだ10秒より出し入れの40秒のほうが大きいので包丁の勝ち。2個でも、まだ包丁が有利です。3個を超えたあたりで稼ぎが固定費に追いつき、4個5個と増えるほどピーラーが一方的に楽になります。

個数で割る目安

  • 1〜2個:包丁のまま。道具を増やさないほうが速い
  • 3個:どちらでもいい。手が空いているほうで
  • 4個以上:ピーラーを出す。出す手間が確実に回収できる

この線引きが効くのは、平日の夕飯のような「少量を手早く」という場面です。味噌汁の具にじゃがいもを1個むくだけなら、包丁でそのまま済ませたほうが台所が散らかりません。逆にカレーを大鍋で作る日や、肉じゃがを多めに仕込む日は、最初からピーラーを出しておくほうが体が楽です。個数を先に数えてから道具を決める。これだけで迷う時間がなくなります。

皮むきの厚さの違いが捨てる量を決める

ピーラーの構造上の強みは、刃と本体の間の隙間が固定されていることです。この隙間より厚くはむけないので、誰が使っても仕上がりが一定になります。逆にいうと、厚みを変えられないのがピーラーの限界でもあります。薄くしかむけない道具だと言い換えてもいいと思います。

薄くむけることは、たいていの場合は利点です。りんごや柿のように皮の直下がおいしい果物では、削り取る量が少ないほど得をします。にんじんや大根の皮も、薄くむけば捨てる部分が減ります。この点でピーラーが優秀なのは、私も使っていて素直にそう思います。実際に皮を並べて比べると、包丁でむいた皮にはまだ実がついていて厚みが残るのに対し、ピーラーの皮は透けて見えるほど薄くなります。捨てる量で考えれば、この差は毎日積み重なっていきます。

ただ、厚くむいたほうがおいしくなる食材もあります。大根は皮のすぐ内側に硬い筋の層があり、煮物にするならこの層ごと厚めに落としたほうが口当たりがよくなります。ごぼうやれんこんのような土物も、泥や傷んだ部分ごと落としたいことがあります。こういうときにピーラーで薄くむくと、何度も往復する羽目になって結局遅くなります。

厚みで選ぶときの考え方

薄くむいて可食部を残したい(りんご・柿・にんじん)→ ピーラー
厚くむいて筋や土ごと落としたい(煮物の大根・ごぼう)→ 包丁

包丁は刃を当てる角度と力で厚みを自由に決められます。皮を透けるほど薄くむくこともできれば、5ミリ落とすこともできる。この自由度は、慣れが必要な代わりに手放しがたい強みです。同じ大根でも、サラダにするなら薄く、煮物にするなら厚くと、その日の料理に合わせて変えられます。むく厚みを料理側から決めたい日は、包丁を持ったままでいるほうが結果的に早く終わります。

言い換えると、ピーラーは「厚みを考えなくていい道具」で、包丁は「厚みを考えられる道具」です。考えなくていいことは、忙しい日には大きな価値になります。何も判断せずに手を動かすだけで一定の結果が出るのは、それだけで楽だからです。ただ、料理によって最適な厚みが違う日には、その一定さが逆に足かせになります。どちらが優れているという話ではなく、その日に自分が厚みを決めたいのかどうか。そこで選ぶと間違えません。

どっちが安全かは持ち方の問題になる

ピーラーは安全な道具だとよく言われます。刃が固定されていて、食材に当たる角度が決まっているぶん、包丁より扱いやすいのは確かです。特に料理を始めたばかりの人にとっては、刃先が自由に動かないという安心感は大きいと思います。

ただし、ピーラーが構造的に安全なわけではありません。ピーラーは刃が奥から手前、つまり自分の体に向かって走る数少ない刃物です。食材を押さえている手の指は、刃の進行方向の先にあります。皮をむき終わって刃が食材から抜けた瞬間、勢いが残っていると、そのまま指まで届きます。ヒヤッとした経験がある人は少なくないはずです。

包丁で皮をむくときは、刃の向きが逆になります。基本の形は、食材を持った手の親指を刃の背側に添えて、刃を外向きに動かすやり方です。刃が自分から離れる方向に動くので、抜けたときに向かう先が体ではありません。この違いは、慣れてしまえば包丁のほうが怖くないと感じる理由になります。

もうひとつ、包丁には刃を止められるという利点があります。皮むきに慣れてくると、刃をほとんど動かさずに食材のほうを回す動かし方になります。刃が止まっていれば、勢いで滑ることもありません。ピーラーは刃を走らせることで成立している道具なので、この止めるという選択肢がそもそもありません。動いている刃と止まっている刃では、危なさの質が変わってきます。

ピーラーで指を切りやすい場面

  • 食材が小さくなってきて、押さえる指と刃の距離が近い
  • 濡れた手や濡れた食材で滑る
  • 切れ味が落ちて、余計な力をかけている

特に3つ目は見落としやすいところです。刃が入らないぶん力で押し込むと、抜けたときの勢いも強くなります。

結局のところ、どちらが安全かは道具の種類ではなく持ち方と刃の状態で決まります。切れる包丁を正しい向きで使うほうが、切れないピーラーを力任せに使うより安全です。なお、ピーラーの切れ味が落ちてきたと感じているなら、ピーラーが切れないときの原因と対処をまとめた記事のほうに詳しく書いています。

にんじんの皮むきはピーラーが向く理由

にんじんは、ピーラーの得意分野がそのまま形になったような食材です。理由は3つあります。まっすぐで、面が長く、そして表面が硬いことです。

まっすぐな食材は、刃を一定の角度で当てたまま最後まで引き切れます。ピーラーは角度が固定されている道具なので、食材のほうがまっすぐであるほど本来の性能が出ます。カーブが少ないぶん途中で刃が浮くこともなく、1回のストロークで端から端まで届きます。

面が長いことも効いてきます。にんじん1本の側面は15センチ以上あり、これを4面から5面むけば1本が終わります。ストローク1回あたりに稼げる距離が長いほど、ピーラーの効率は上がります。逆にいえば、面が短い食材ではこの強みが出ません。ここが、後で出てくるじゃがいもや里芋との分かれ目になります。

表面の硬さも味方します。にんじんはある程度の硬さがあるので、刃を当てても表面が逃げません。柔らかい食材だと刃が滑ったり実がつぶれたりしますが、にんじんではそれが起きにくいので、軽い力で安定して薄くむけます。トマトのように皮が薄くて中身が柔らかい食材でピーラーが滑るのは、この逆のことが起きているからです。刃が食い込む前に表面が逃げてしまうと、どれだけ切れる道具でも薄くはむけません。

この3つが揃っている食材は、実はそう多くありません。にんじん、大根、きゅうり、ズッキーニ、アスパラガスあたりが該当します。共通しているのは細長くて硬いという形で、逆にいえば丸くて小さくて柔らかいほど、ピーラーの得意領域から外れていくことになります。この物差しを持っておくと、初めて扱う野菜でもどちらを出すか見当がつきます。

ただし、にんじんでも個数の話は生きています。味噌汁に少し入れるだけで、1本の3分の1しか使わないなら、包丁でそのまま面を落としたほうが速いことがあります。逆にきんぴらを作るために3本まとめてむくなら、迷わずピーラーです。同じ食材でも、その日にむく量で答えが変わるということです。大根も理屈はまったく同じで、長い面が続く食材はピーラーの土俵だと考えておけば外しません。

りんごの皮むきは包丁とどっちを選ぶか

りんごは、判断が割れる食材です。実際に検証している記事を見ると、ピーラーのほうが薄くむけるという結果が出ています。皮の直下は糖度が高い部分なので、薄くむけるほど甘い部分を残せる。この理屈は理にかなっていると思います。

それでも私が包丁を選ぶことが多いのは、りんごが「1個か2個」で終わる食材だからです。おやつに1個むくだけなら、ピーラーを出して洗って戻す手間のほうが大きくなります。しかもりんごは皮をむいたあと、芯を取って切り分ける工程が必ず続きます。どうせ包丁を使うなら、最初から包丁だけで完結させたほうが速いという話です。

りんごの形も関係します。球に近い形なので、長い直線の面がありません。ピーラーの得意な「長いストローク」が使えず、短く何度も往復することになります。さらにヘタ側とお尻側はくぼんでいて、固定された刃の角度では入り込めません。結局その部分だけ包丁で落とすことになり、道具を2つ使う羽目になります。

ただ、包丁で丸い果物をむくには慣れが要るのも事実です。刃を動かすのではなく、刃を止めて左手でりんごを回す。この動かし方が身につくまでは、厚くむいてしまったり途中で皮が切れたりします。うまくできないうちは、無理せずピーラーを使ってかまわないと思います。私も最初から回せたわけではなく、何十個かむくうちに手が覚えました。できないから道具に頼るのは、まったく悪いことではありません

りんごをどっちでむくか

1〜2個をその場で食べる → 包丁1本で完結させる
5個以上を一度にむく(ジャムや焼き菓子) → ピーラーが楽

柿や梨も同じ考え方でいけます。数個をその場で食べるなら包丁、まとめて仕込むならピーラーです。なお、果物のために専用の小さい包丁を買うべきかどうか迷っている人は、果物ナイフが必要かを整理した記事のほうも参考になると思います。手持ちの包丁で足りるかどうかの話をしています。

じゃがいもの芽は結局包丁が要る

じゃがいもの皮そのものは、ピーラーでも包丁でもむけます。問題は皮ではなく、芽とくぼみのほうです。

多くのピーラーには、芽取り用の突起がついています。これで軽く取れることもありますが、深く入り込んだ芽には届かないことが少なくありません。突起の形はU字型やスコップ型で、掘れる深さに限界があります。何度もほじくり返すうちに、じゃがいもの表面が荒れて、結局きれいに取れないまま終わることがあります。

包丁なら、刃元の角を使って芽の周りに切り込みを入れ、円錐状にえぐり取れます。刃先の角度を自由に変えられるので、どんな深さの芽にも届きます。私は芽の周囲にぐるりと刃を入れてから持ち上げる形で取ることが多く、この方法だと余分な実を落とさずに済みます。

じゃがいもの現実的な進め方

数が多いときは、皮をピーラーで一気にむいてから、芽だけ最後に包丁でまとめて処理する。道具を持ち替える回数が最小になります。

くぼみも同じ話です。じゃがいもは表面に凹凸があり、固定された刃では谷の部分に届きません。ピーラーでむいたあとに皮が点々と残るのは、この構造のせいです。気にせず食べてしまうこともできますが、見た目を整えたいなら包丁で拾うことになります。皮が残っていても味に影響はないので、私は肉じゃがのように煮込む料理では気にしません。ポテトサラダのように色が目立つ料理のときだけ、あとから包丁で拾っています。

つまりじゃがいもは、どちらか一方では終わらない食材です。何個むくかで主役は変わりますが、最後に包丁が要るという点だけは個数に関係なく共通しています。1個や2個なら、最初から包丁だけで済ませたほうが持ち替えが発生しないぶん速い。この食材は、二択というより役割分担で考えるのが実際的です。

包丁とピーラーのどっちを出すか迷う場面の答え

ここまでは、どちらでもできる作業をどう選び分けるかという話でした。ここからは角度を変えて、ピーラーでは構造的にできない、あるいは無理をすると危ない場面を並べます。この線を知っておくと、迷う時間そのものが減ります。刃の角度が固定されているという性質は、安定を生む代わりに、対応できる形を限定してしまうからです。

かたい皮のかぼちゃと包丁
硬い皮や深い凹凸は、刃の角度を変えられる包丁の領域になる

かぼちゃの皮にピーラーが無理な理由

かぼちゃにピーラーを当てて、刃が入らずに滑った経験がある人は多いと思います。これは道具の切れ味の問題ではなく、力の掛け方の問題です。

ピーラーは、刃を寝かせて浅い角度で食材に入れる道具です。この角度は柔らかい皮を薄く削ぐには最適ですが、硬い相手に対しては刃が食い込まずに表面を滑るという結果になります。角度が固定されている以上、使う側が調整することもできません。

包丁なら、刃を立てて上から体重をかけられます。かぼちゃの皮をむくときは、まず安定するように切り分けてから、平らな面をまな板に伏せて置き、皮と実の境目に刃を入れて削ぎ落としていく形になります。刃を立てられるので、硬い皮でも食い込ませることができます。角度を自分で決められるというのは、こういう場面で効いてきます。

そもそもかぼちゃは、皮を全部むく必要がない食材でもあります。煮物なら皮を所々だけ削る「まだらむき」にすれば、煮崩れを防ぎながら味も染みます。全部むこうとするから大変になるだけで、目的に合わせて落とす量を決められれば作業はずっと軽くなります。これも、厚みと範囲を自分で決められる包丁だからできることです。

硬い皮に無理をしない

入らない刃に力を足すと、滑った先に押さえている手があります。刃が入らないと感じた時点で道具を替えるのが、いちばん確実な怪我の防ぎ方です。

さつまいもやとうもろこしの芯周りなど、硬さや形が特殊な食材でも同じことが起きます。判断の基準はシンプルで、2〜3回当てて刃が入らなければ、ピーラーの担当ではないと考えてください。粘って解決する場面ではありません。かぼちゃは丸ごと1個を相手にすると重労働になるので、先に切り分けて安定させることのほうが、道具選び以上に効いてきます。

ごぼうの皮は包丁の背でむく方が速い

ごぼうは、そもそも皮を全部むかないほうがおいしい食材です。香りと風味は皮のすぐ下に集まっているので、しっかりむいてしまうと持ち味が抜けます。ここでやりたいのは、皮を落とすことではなく、泥と黒ずんだ表面だけをこそげ落とすことです。

ピーラーでこれをやると、削りすぎます。刃と本体の隙間で厚みが決まっているので、こそげるという弱い当て方ができません。結果として、風味の乗った部分まで一緒に落ちてしまいます。作業自体はできるのですが、目的から外れた仕上がりになります。

包丁を使うといっても、刃で切るわけではありません。包丁の背、つまり刃のついていない側をごぼうに当てて、こするように動かすやり方です。背には刃がないので削りすぎることがなく、泥と表面の黒い部分だけが落ちます。アルミホイルを丸めてこする方法や、たわしで洗う方法も原理は同じで、要するに削るのではなくこすり落とすという発想です。

この「刃を使わない」という選択肢があること自体、包丁の懐の深さだと思います。ピーラーは刃を当てる以外の使い道がなく、当てれば必ず決まった厚みが削れます。加減という概念がありません。ごぼうのように、落としたいけれど落としすぎたくないという微妙な要求には、この加減が要ります。

包丁の背でこそげる手順

  1. ごぼうを水で洗って泥を落とす
  2. 包丁の背を寝かせて当てる
  3. 手前に引くように軽くこする
  4. 色が変わったら、そこで止める

この作業は、包丁を持っている手をそのまま使えるのが利点です。ごぼうを切る工程がこのあと必ず続くので、持ち替えも発生しません。ささがきにするなら、そのまま包丁で削いでいけます。ごぼうは最初から最後まで包丁だけで完結する、数少ない食材のひとつだと思います。皮を落とす作業と、風味を残す作業は、似ているようで目的が違うということです。

里芋のぬめりはどっちでも滑るという話

里芋は、どちらの道具を選んでも苦戦する食材です。皮が厚く、ピーラーの刃の隙間に詰まりやすい。そして濡れるとぬめりが出て、手からも刃からも逃げていきます。ここは正直に、道具選びでは解決しない部分だと書いておきます。

ピーラーが苦手な理由は2つあります。皮が厚くて薄くむく道具と噛み合わないこと、そして小さくて丸いので長いストロークが取れないことです。にんじんで効いていた強みが、ここでは全部裏返ります。刃の隙間に厚い皮が詰まり、そのたびに落とす手間も増えます。

包丁でも滑ることは滑ります。ただ、包丁には厚くむけるという利点があるので、六方むきのように面で落としていく方法が使えます。丸い形を平面の集まりに変えてしまえば、押さえる場所が安定して滑りにくくなります。滑る原因はぬめりであって、道具の側にはありません。だから対策も道具ではなく、下処理のほうに向けることになります。

滑りを減らす下ごしらえ

泥を落としたあと、しっかり乾かしてからむく。皮が乾いていればぬめりは出にくくなります。時間があるなら半日ほど陰干しすると、かなり扱いやすくなります。

塩をまぶして表面のぬめりを落としてからむく方法や、加熱してから皮をむく方法もあります。電子レンジや蒸し器で火を通してしまえば、皮は手でもつるりと剥けます。手間を減らすという意味では、これがいちばん確実かもしれません。私も量が多い日は、皮ごと加熱してから剥く方法を使っています。刃物を使わずに済むので、滑って怪我をする心配もなくなります。

里芋に関しては、どっちを使うかを考える前に、乾かすか加熱するかを先に決めたほうが早く終わります。道具の選択が答えにならない食材もあるということです。二択で考えていると、どちらを選んでもうまくいかないときに手が止まってしまいます。そういうときは、道具ではなく段取りのほうを疑ってみてください。食材の状態を変えてしまえば、そもそも難しい作業ではなくなることがあります。

大根の桂むきと面取りは包丁だけ

桂むきは、大根を筒状に切ってから、薄い帯にして長くつなげてむいていく技法です。刺身のつまや、あしらいに使われます。この作業は、ピーラーでは原理的にできません。

理由は、桂むきが「刃を動かさずに食材を回す」動きだからです。左手で大根を回しながら、右手の親指で厚みを調整し、刃はほとんど動かしません。厚みを1ミリ以下で連続的に変え続ける必要があり、これは固定された刃には不可能な制御です。ピーラーは食材に対して刃を走らせる道具なので、動きの前提そのものが違います。

もっとも、家庭料理で桂むきが必要になる場面は、そう多くありません。刺身を自分でひくならつまが要りますが、普段の食事で登場することはまずないと思います。ここで言いたいのは技法の必要性ではなく、包丁にしかできない領域が確実に存在するということです。

私自身、桂むきが得意なわけではありません。何度やっても途中で切れますし、均一な厚さにはほど遠い出来です。それでも練習してみると、刃を止めて食材を動かすという感覚が身につきます。この感覚は普段の皮むきにそのまま効いてきて、りんごやじゃがいもを回しながらむくのが楽になります。桂むきそのものより、その動かし方を覚えることに意味があると感じています。

そして、もっと身近なところにも同じ壁があります。面取りです。切った野菜の角を薄く削り落とす下ごしらえで、煮物の大根やにんじん、かぼちゃで使います。角が立ったままだと煮ている間にぶつかって崩れるので、先に丸めておくわけです。これもピーラーではできません。面取りは、切り口の角という幅数ミリの狭い部分だけを狙って削る作業だからです。ピーラーの刃はもともと面を一気にむくための幅を持っているので、当てた時点で角だけでなく周りの面まで触れてしまいます。刃が広いことは、長い面を一気にむくときには強みですが、狭い場所を狙うときには弱みに変わります。

包丁なら、刃の一部分だけを角に当てて、すっと引けば終わります。刃元を使うか、真ん中を使うか、先を使うか。同じ1本の中に何種類もの当て方があり、作業に応じて選べます。面取りは省略されがちな工程ですが、煮物の仕上がりははっきり変わります。角が崩れないので煮汁が濁らず、見た目もきれいに残ります。

包丁でしかできない作業

  • 桂むき(厚みを連続的に制御する)
  • 面取り(狭い角だけを狙って削る)
  • 飾り切り(角度を自由に変える)
  • くし切り・乱切り(皮むき以外の切り分け)
  • 芽やヘタのくり抜き(刃先を点で使う)

並べてみると、共通点が見えてきます。どれも刃の角度や当てる場所を自分で決める必要がある作業です。ピーラーは角度を固定することで安定と手軽さを手に入れた道具なので、その代償として、この種の作業を全部手放しています。この一点を理解しておくと、ピーラーで無理をしそうになったときに自分でブレーキがかけられます。

そしてこの話は、皮むきの道具選びにそのまま跳ね返ってきます。煮物用に大根をむくなら、そのあと必ず面取りの工程が来る。どうせ包丁を持つなら、皮むきから包丁でやったほうが持ち替えが起きません。にんじんのように長い面があってピーラー向きに見える食材でも、料理が煮物なら包丁のまま進めたほうが速く終わることがあります。道具を選ぶときは、その食材の形だけでなく、次に何をするのかまで含めて考えると迷いません。

どっちを使うかの判断を一行にまとめる

長く書いてきたので、最後に整理します。ピーラーと包丁のどちらを使うかは、食材の名前で覚える必要はありません。むく個数と、刃が走る面の長さ、この2つを見れば決まります。

まず個数です。1個か2個なら包丁のまま進めてください。ピーラーを出して洗って戻す時間のほうが、むく作業で稼げる時間より大きくなります。4個以上なら、出す手間は確実に回収できるのでピーラーの出番です。3個はどちらでもいいので、手が空いているほうを使ってください。

次に面の長さです。にんじんや大根のように、刃が一度に長く走れる食材はピーラーが速くなります。りんごやじゃがいものように、面が短くて何度も往復する形では、その強みが出ません。

そして、この2つを見る前に確認したほうがいい例外がいくつかあります。かぼちゃのように刃が入らない硬さ、里芋のように厚い皮、そして面取りや桂むきのように角度を変える作業。ここはピーラーの担当ではないので、最初から包丁を持ってください。

迷ったときの一行

3個以上むくか、長い面が続くならピーラー。それ以外は包丁のままでいい。

もうひとつ付け加えるなら、包丁の切れ味が落ちていると、この判断の前提が崩れます。切れない包丁で皮をむこうとすれば当然うまくいかず、何でもピーラーに頼ることになります。逆にいえば、包丁さえきちんと切れていれば、ピーラーを出す場面は思っているより少ないということです。研ぎ直しながら長く付き合える1本があると、台所の道具はかなり減らせます。

私が普段むいているのも、特別なものではありません。ミソノ モリブデン鋼 三徳 180mmのような、業務用にも使われているステンレスの三徳です。派手さはありませんが刃持ちがよく、家庭用の砥石で研ぎ直しながら使えます。皮むきまで1本で任せるつもりなら、切れ味が落ちにくいものを選んでおくと後が楽です。

研ぎ上がった三徳包丁と砥石
包丁が切れていれば、ピーラーを出す場面は思ったより少なくなる

そもそもピーラーを持つべきかどうかから考えたい人は、ピーラーがいらない家庭の条件をまとめた記事のほうに、買う価値がある人の条件まで書いています。この記事は両方持っている前提で、その場でどちらを取るかという話でした。台所の道具は、増やすより使い分けを決めるほうが、結局は楽になると思っています。

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