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多くの家庭でピーラーはいらない。三徳とペティで皮むきは足りる。ただし薄切りや大量の下処理をする人は買う価値がある。
こんにちは。静岡で料理歴15年、包丁の趣味が10年を超えたコウスケです。引っ越しや模様替えのタイミングで、キッチンの引き出しを開けて「これ、まだ使ってるかな」と手が止まるものがありませんか。ピーラーは、その筆頭に挙がりやすい道具です。
ピーラーを売っている側は、まず「いりません」とは書きません。だからネットで検索しても、出てくるのは選び方と使い方ばかり。買うべきかどうかを迷っている人が本当に知りたい「そもそも要るのか」に、まっすぐ答えている記事はほとんど見当たりません。包丁を好きで集めてきた立場から、そこを正直に整理してみます。
- 包丁だけで皮むきがどこまで成立するのかがわかる
- ピーラーを買ったほうがいい人の条件がはっきりする
- じゃがいも・にんじん・大根など、食材ごとの線引きがわかる
- 研げない道具にお金をかけるかどうかの判断軸が持てる
ピーラーはいらないと言い切れる家庭の条件
最初に、どういう家庭ならピーラーを持たずに済むのかをはっきりさせておきます。結論の先取りをすると、条件はかなりゆるいです。ふつうに三徳包丁が1本あって、りんごの皮を最後までむききれる程度の手つきがあれば、それでもう足ります。ここでは、その「足りる」の中身を、包丁の動かし方と食材ごとの手ざわりに分けて具体的に見ていきます。

皮むきは包丁だけで足りるのか
まずいちばん大事なところから。皮むきという作業は、包丁の刃全部を使う必要がありません。使うのは刃元から中央にかけての、指2〜3本ぶんくらいの範囲だけです。ここを親指で軽く支えながら、包丁ではなく食材のほうを回していく。この動かし方さえ身につけば、じゃがいもでもりんごでも、皮は勝手にするするとつながって落ちてきます。
多くの人が皮むきを苦手だと感じるのは、包丁を動かそうとしているからです。刃を食材に押し当てて、腕ごと前後に動かす。これだと力の加減が難しく、厚くむけたり、途中で皮が切れたりします。逆に刃は止めて、食材のほうを親指で送り出すと、刃はただ同じ位置にあるだけなので、むける厚みが自然に揃います。理屈としてはピーラーとまったく同じで、ピーラーは「刃が動かないこと」を道具の側で保証しているにすぎません。
つまり、包丁で皮がむけないという悩みの正体は、切れ味の問題でも刃物の種類の問題でもなく、ほとんどが手の動かし方の問題です。ここを一度覚えてしまうと、道具を1つ減らせるだけでなく、面取りや芽取り、細かい下ごしらえまで同じ持ち方で続けられます。作業が包丁1本の中で完結するので、持ち替えの手間が消えるぶん、体感としてはむしろ速くなります。
もうひとつ包丁側に分があるのが、厚みを自分で決められる点です。ピーラーは刃と本体の隙間で厚みが固定されているので、常に同じ厚さでしかむけません。ところが野菜の皮は、季節や個体で厚さが違います。秋の新しい大根は薄くていいけれど、春先まで置かれた大根は皮の内側が筋張っていて、厚くむいたほうがおいしい。この判断を毎回できるのは包丁だけです。厚みを状況に合わせて変えられることは、道具としてはかなり大きな自由度です。
洗い物の数も無視できません。ピーラーは刃と本体のつなぎ目に皮のかけらが詰まりやすく、スポンジが入らないので歯ブラシで掻き出すことになります。包丁なら、切る作業の流れでそのまま洗って終わりです。1回あたりは数十秒の差でも、毎日のことになると積み上がります。道具を増やすというのは、置き場所と洗い物と、買い替えの判断を1つ増やすことでもある、と考えておいたほうが正確です。
そもそも自分の台所に何が要るのかを整理したい人は、包丁の種類を用途から選び直す記事にも目を通してみてください。ピーラーが必要かどうかは、突き詰めると「手持ちの包丁が自分の料理に合っているか」という話に行き着きます。合っていない包丁のせいでピーラーが必要になっているケースは、思っているより多いです。
ピーラーを使わなくなる人が多い理由
買ったのに使わなくなる。これはピーラーに限らず、キッチンの専用道具ぜんぶに共通する話です。ミニマリストとして暮らす方がnoteに書かれている体験談がわかりやすくて、キャベツ専用のピーラーを買ったものの、キャベツが高騰した時期に食卓から千切りが消えて一度お蔵入りし、値段が落ち着いてからようやく復活したそうです。道具そのものは何も変わっていないのに、生活のほうが変わると出番が消える。専用の道具はここが弱点です。
ピーラーの場合、使わなくなる引き金は大きく3つあります。1つ目は切れ味の低下です。ピーラーの刃は薄く、しかも露出しています。引き出しの中で他の道具とぶつかれば刃先はすぐに傷みますし、硬い皮に力任せに当てれば刃が丸まります。切れないピーラーは、力を入れないと皮が進まないので、使うたびに小さなストレスが溜まります。
2つ目は、洗いにくさです。前に触れたとおり、刃と本体の隙間には必ず皮が入り込みます。にんじんの皮のオレンジ色や、じゃがいものデンプンが残ったまま乾くと、次に取り出したときに気持ちよく使えません。面倒な洗い物が1つあるだけで、道具は使われなくなります。これは包丁にもいえることですが、ピーラーは構造上その面倒さから逃げられません。
3つ目は、料理が変わることです。自炊を続けていくと、作るものは必ず変わっていきます。皮つきのまま蒸す、まるごとオーブンに入れる、皮を薄く残して食感を活かす。こういう調理を覚えていくと、そもそも皮をむく回数自体が減ります。皮をむかない料理が増えるほど、ピーラーの出番はゼロに近づいていきます。
私自身は、道具を減らすかどうかで迷ったときは「その道具が消えたら、どの料理が作れなくなるか」を数えるようにしています。ピーラーが消えて作れなくなる料理は、正直ほとんどありません。作業が少し遅くなる料理があるだけです。同じ考え方で判断できる道具にキッチンばさみがあって、こちらはハサミと包丁の線引きをまとめた記事で整理しています。あわせて読むと、道具を減らすときの基準が自分の中で固まってきます。
使わなくなった道具を捨てるかどうかは、半年ルールで決めると迷いません。半年一度も手に取らなかったものは、これから先も手に取りません。
じゃがいもの皮むきは包丁で困らない
じゃがいもは、ピーラー派がいちばん手放しにくい食材だと思います。丸くて滑る、くぼみがある、芽がある。たしかに難易度は高めです。ただ、包丁で困らない理由もはっきりしています。じゃがいもの皮むきで面倒なのは皮そのものではなく、くぼみと芽のほうだからです。そしてそこは、結局ピーラーでも包丁のような刃先が必要になります。
やり方はシンプルで、まず左手でじゃがいもを持ち、刃元を皮に軽く当てて、親指でじゃがいもを回します。1周むけたら向きを変えて、もう1周。丸いものは「回してむく」が基本で、包丁を上下に動かす必要はありません。慣れれば1個あたり1分もかかりません。くぼみが深い品種は、無理に刃を入れず、皮を残したまま最後にまとめてえぐったほうが早いです。
芽の処理は、包丁のほうが確実です。じゃがいもの芽にはソラニンなどの有毒成分が含まれていて、加熱しても分解されません。だから根元からしっかり取り除く必要があります。刃元の角を差し込んで、円を描くようにくり抜けば、深い芽でも残さず落とせます。ピーラーの脇についている芽取りの金具は、浅い芽なら使えますが、育ってしまった芽を根こそぎ取るには心もとない場面があります。
新じゃがのように皮が薄いものは、そもそも「むかない」という選択が正解です。皮ごと食べたほうが香りが立ちますし、栄養も残ります。どうしても表面をきれいにしたいときは、丸めたアルミホイルやスプーンのふちでこすると、薄皮だけがつるりと取れます。同じ要領で、ペットボトルのフタのギザギザを当ててこする方法もよく紹介されていて、刃物を使わないぶん子どもに任せても安心です。仕上がりはピーラーより表面が少し粗くなりますが、皮は驚くほど薄くむけます。この場面では、ピーラーも包丁も出番なしです。皮をむかない料理を1つ覚えるほうが、道具を1つ買うよりも効きます。
逆に、じゃがいもを大量に扱う日は話が変わります。カレーやポテトサラダを大鍋で仕込むとき、10個も15個もむくなら、片手で流れ作業ができるピーラーはやはり速いです。これは技術の差ではなく、作業の性質の差です。同じ動作をひたすら繰り返す場面では、動きを固定してくれる道具のほうが疲れません。ここが後半で話す「買うべき人」の入り口になります。
Q. 皮を厚くむいてしまうのが気になります。
A. 刃を動かすのをやめて、じゃがいもを回してみてください。刃の位置が変わらなければ、むける厚みは自然に揃います。
にんじんと大根はどこまで包丁でいける
長い野菜は、丸い野菜より包丁向きです。にんじんも大根も、まず食べる長さに切り分けてから、断面を下にしてまな板に立てる。あとは包丁を上から下へ、皮の内側に沿って落とすだけです。まな板の上で安定するので、手を切る心配がほとんどありません。1本まるごとを手に持ってむこうとするから難しくなるのであって、切ってから立てれば急に簡単になります。
にんじんは皮が薄く、栄養も香りも皮のすぐ下に多い野菜です。だから本来は厚くむきたくありません。包丁なら「皮だけ」という薄さをねらえますが、ピーラーは刃と本体の隙間ぶん、どうしても身まで持っていきます。丁寧に作りたい煮物やグラッセでは、この差が仕上がりの色にも出ます。逆に、包丁で薄くむく自信がないうちは、ピーラーのほうがロスは少ないかもしれません。ここは腕次第で答えが変わるところです。
大根は、包丁のほうがはっきり有利な野菜です。大根の皮の内側には、繊維の硬い層があります。煮物やおでんに使うなら、この層まで含めて3〜4ミリほど厚くむいたほうが、口当たりがはるかによくなります。プロが大根を厚くむくのはこのためです。ピーラーで薄くむくと硬い筋が残り、いくら煮ても口に残ります。厚さを自分で決められるという包丁の長所が、いちばん効く場面です。
むいた皮を使い切りたい人にも、包丁は向いています。厚めにむいた大根の皮は、細切りにしてきんぴらにすると、これがかなりおいしい。ピーラーでむいた薄い皮は、ひらひらして扱いにくく、まとめて刻むのに向きません。捨てる部分を減らしたいと考える人ほど、包丁のほうが料理の選択肢が増えます。
ごぼうは少し特殊で、包丁もピーラーも本命ではありません。ごぼうの香りは皮のすぐ下に集まっているので、包丁の背でこそげるか、アルミホイルを丸めてこするのがいちばんです。ピーラーでむくと香りごと持っていってしまいます。里芋も、ぬめりで滑ってピーラーの刃が引っかかるため、包丁で厚めに面を落としたほうが確実です。食材ごとに向き不向きがあって、ピーラーが万能というわけではない、と知っておくと選びやすくなります。

ピーラーは研げないという維持の話
ここは、選び方の記事ではあまり触れられない部分です。ピーラーの刃は、基本的に研ぐことを前提に作られていません。刃が細く、本体に固定され、しかも両側から支えられているため、砥石を当てる面がそもそも取れないからです。切れ味が落ちたピーラーは、原則として買い替えることになります。すでに切れなくなったものをどうするかはピーラーが切れないときの見分け方と替えどきにまとめました。
これは包丁とは決定的に違う性質です。包丁は、切れなくなっても砥石で戻せます。数千円の三徳でも、研ぎながら使えば10年でも20年でも現役でいられます。対してピーラーは、切れ味が落ちた時点で終わりが見えます。買い替えを前提にした道具である、という点は買う前に知っておいたほうがいいところです。研げないという性質は、そのまま維持コストの話になります。
もちろん、抜け道がないわけではありません。刃だけを交換できるタイプのピーラーはありますし、刃こぼれ程度なら専用のシャープナーやヤスリで一時的に戻せる場合もあります。ただ、どちらも「そこそこの値段のピーラー」でないと選択肢に入りません。100円のものを何度も買い替えるか、数千円のものを長く使うか。実はこの選択、包丁の世界でずっと言われてきたことと同じ構図です。
そして、買い替えのタイミングが自分では判断しにくいのもピーラーの厄介なところです。包丁は、トマトの皮が滑った瞬間に「研ぎどきだ」とわかります。ピーラーは、切れ味が落ちても皮はいちおうむけてしまうので、少しずつ力が要るようになっていることに気づきません。気づかないまま力を入れて使い続けると、皮が厚くむけて食材のロスが増え、指を切る危険も上がります。
だから、もしピーラーを買うなら、値段の下限を割らないほうがいいと思っています。研げない道具は、買った日の切れ味がそのまま上限になるからです。包丁なら落ちた切れ味を砥石で取り戻せますが、ピーラーは落ちたぶんが戻ってきません。だとすれば、スタート地点の高いものを選んでおくしかない。安いものを何本も買い替えるより、結果として安く済みますし、切れないまま我慢して使う期間も短くなります。買い替えの目安は、皮が途中でちぎれる回数が増えてきたときです。むける厚みが揃わなくなったら、腕が落ちたのではなく刃のほうが落ちています。
100均ピーラーはなぜ切れないのか
100円ショップのピーラーが必ずしも悪いわけではありません。オールステンレスの作りのいいものもありますし、100円で買ったピーラーを何年も愛用していたと書いている人もいます。ただ、当たり外れの幅が大きいのは事実です。そして外れを引いたときに何が起きているのかは、包丁で考えると一発でわかります。
包丁の切れ味は、刃先の角度で決まります。研ぎたての包丁は刃先が鋭く、トマトの皮に当てただけで刃が入っていく。ところが研ぎを怠って刃先が丸まると、皮の上を刃が滑って、押しつけないと入りません。ピーラーで起きているのも、まったく同じことです。切れないピーラーは、刃としての角度がついていないだけで、金属板が2枚並んで挟まっているのに近い状態になっています。
刃が入らないとどうなるかも、包丁で経験ずみです。切れない包丁でトマトを切ると、刃が入る前に皮が沈み、断面がつぶれて水が出ます。切ったのではなく、押し切ったからです。ピーラーも同じで、刃が入らないぶん力を込めることになり、むいた面がざらついて、じゃがいもなら白く粉っぽく、にんじんなら妙に水っぽく仕上がります。しかも力任せになるほど皮は厚くむけるので、捨てる部分まで増えていきます。
私が店頭で確かめるのは3つです。1つ目は刃と本体の隙間。ここの幅がそのまま「むける厚み」になるので、隙間が広いものは何をむいても厚くなります。2つ目は、刃を指の腹で軽く押してみてガタつかないか。押した程度で動く個体は、硬い皮に当てた瞬間に刃が逃げて、皮が途中でちぎれます。この2つは、包丁でいう刃の厚みと柄のガタつきを見るのと同じ確認です。
3つ目が、刃が本体に対して斜めについているかどうか。これは料理人が書いたピーラー選びの解説でも見分け方として挙げられている点ですが、理屈は包丁とまったく同じです。包丁は真下に押しつけるより、手前に引きながら切ったほうが軽く入ります。刃が斜めについていると、まっすぐ引くだけでこの引き切りが自動的に起きるので、力を入れなくても皮が進みます。真横についているものは、押しつけるしかありません。
ここまで見ていくと、気づくことがあります。良いピーラーを選ぶ基準は、良い包丁を選ぶ基準とほとんど同じだということです。刃がちゃんとついているか。ガタつかないか。長く使える素材か。だとしたら、その予算を包丁のほうに寄せるという判断も十分ありえます。切れる包丁が1本あれば、皮むきも切る作業も、どちらもその1本で片づくからです。
ピーラーがいらない人と買うべき人の分かれ目
ここからは反対側の話をします。ピーラーを買ったほうがいい人は確実にいて、その条件はかなりはっきりしています。「料理が下手だから」ではありません。作る量、体の状態、一緒に台所に立つ人。この3つのどれかに当てはまるなら、ピーラーは買う価値のある道具です。自分がどちら側なのかを、ここで決めてしまいましょう。

ピーラーを買う価値がある人の条件
まず、下ごしらえの量が多い人です。家族が4人以上いる、作り置きをまとめて仕込む、週末に一週間分の野菜を処理する。こういう料理の仕方をしているなら、ピーラーは確実に働きます。じゃがいもを15個むく作業は、技術の問題ではなく単純な反復作業です。動きを固定してくれる道具があると、疲れ方が違います。
次に、握力や手指に不安がある人です。腱鞘炎の経験がある、手首を痛めている、握り続けるのがつらい。包丁での皮むきは、刃を支える親指と、食材を回す指の両方を使い続けます。ピーラーは押し引きの往復だけで済むので、指の細かい力が要りません。体の負担を減らす目的でピーラーを持つのは、まったく正しい選択です。ここを「包丁で十分」と押しつけるつもりはありません。
3つ目が、子どもや高齢の家族と一緒に台所に立つ人です。刃が露出していない、刃の進む向きが決まっている、手前に引くだけで完結する。この3点があるので、包丁より事故が起きにくい。お手伝いの入口としては、ピーラーはよくできた道具です。ただし刃物であることに変わりはないので、進行方向に指を置かないことだけは最初に教えたほうがいいです。
4つ目に、キャベツの千切りやサラダ用の薄切りを日常的に作る人。これは皮むきとは別の使い方です。専用の刃がついた千切りタイプを使えば、包丁では難しい極薄の千切りが短時間で山盛りできます。包丁の千切りが苦手でも、ふわふわの仕上がりが手に入る。ここは道具に頼る価値がはっきり出る場面です。
逆に言えば、一人暮らしや二人暮らしで、じゃがいもを一度に2〜3個むく程度、キャベツは買ってきたものをざく切りにするだけ。この使い方なら、ピーラーがなくても困りません。量が少ないほど、道具を出して洗う手間のほうが上回ります。自分がどちらの料理をしているかで、答えは自然に決まります。
迷ったら、直近1か月で「皮を5個以上まとめてむいた日」が何日あったかを思い出してみてください。2日以下なら、まず要りません。
なお、ピーラーを買うことにした場合、その後の使い分けで迷う場面が出てきます。目の前の食材に対してピーラーを出すべきか包丁のままでいくべきかは、むく個数と面の長さで決める判断の記事にまとめています。
T字とI字の違いはどこで選ぶのか
買うと決めたなら、次に迷うのが形です。ピーラーには大きくT字型とI字型があって、性格がまるで違います。ここを知らずに「よく売れているから」で選ぶと、手に合わなくて使わなくなります。この2つの違いは、包丁でいえば三徳と牛刀くらいはっきりしています。
T字型は、刃と柄が垂直に交わる形です。日本の家庭でいちばん見かけるのがこのタイプで、刃の幅が広く、一度に多くの面積をむけます。にんじん、大根、ズッキーニのように長くて平らな面がある野菜に強い。持ち方も直感的で、初めて触る人でもすぐに使えます。ただし刃幅が広いぶん、小さい食材や丸みの強いものには刃が浮きやすく、細かいところが残ります。
I字型は、刃と柄が平行についている形です。ヨーロッパで主流のタイプで、包丁と同じ感覚で構えられます。刃の幅が狭いので小回りが利き、じゃがいもやりんごのような丸い食材、小ぶりな野菜が得意です。両刃になっているものが多く、右利きでも左利きでも扱えます。包丁を使い慣れている人ほど、I字型のほうがしっくりきます。刃を止めて食材を回すという動きが、包丁とまったく同じだからです。
選び方の目安をひとつ挙げるなら、根菜を長いままむくことが多いならT字、丸い野菜や果物が中心ならI字です。両方買う必要はありません。どちらか1本に絞って、手に合わなければ次で乗り換えればいい。そもそもピーラーは長く使う前提の道具ではないので、1本目で完璧を狙わなくていいというのは、気楽なところでもあります。
ちなみに、包丁側でこの2つの役割にあたるのが三徳とペティです。三徳が守備範囲の広いT字、ペティが小回りの利くI字、と考えるとイメージしやすいと思います。ペティ1本でどこまでいけるのかは、ペティナイフだけで足りるかを検証した記事で詳しく書いています。皮むきをペティに任せる構成が自分に合いそうなら、ピーラーはいよいよ必要なくなります。
子どもや高齢者と使うなら何を選ぶ
家族と一緒に料理をする場面では、選び方の優先順位が変わります。切れ味よりも先に、安全に扱えるかどうかが来ます。ここでピーラーが持つ利点は本物なので、包丁派の私でも素直におすすめできる場面です。
子どもと使うなら、まず刃の露出が少ないものを選びます。刃の両側がガードで挟まれている形なら、指が直接触れる面積が小さくなります。次に、持ち手が滑りにくいこと。濡れた手で握っても回らないよう、ゴムや樹脂のグリップがついているものが安心です。そして、食材を押さえる補助具を一緒に使うと、事故の可能性がぐっと下がります。食材にフックを刺して固定するタイプの道具があり、手で押さえなくてよくなるぶん、刃と指が近づきません。
高齢の家族と使う場合は、重さの選び方が逆になります。若い人には「ある程度の重さがあるほうが疲れない」が正しいのですが、握力が落ちている人には重さがそのまま負担になります。軽くて、グリップが太めで、引く距離が短くて済むものを選んでください。刃の切れ味がよければ、軽くても力は要りません。ここでも、切れ味の悪いものを選ぶと力任せになり、いちばん危ない使い方になります。
教え方にもコツがあります。最初に伝えるのは「刃の進む先に指を置かない」の一点だけでいいです。よくあるのは、進行方向に置いた親指を巻き込んでしまうケースです。細かい持ち方より、この一言を最初に徹底したほうが安全です。新品のピーラーは刃が鋭いので、使い始めの数回はとくに注意してあげてください。
果物の皮むきを子どもに任せたい、という相談もよく見かけます。りんごや梨を安全にむかせたいなら、ピーラーは有力な選択肢です。ただ、果物専用のナイフを買うかどうかは別の話で、こちらは果物ナイフが必要かどうかを整理した記事にまとめてあります。道具を増やす前に、いま持っている包丁で代われないかを確かめてから決めたほうが、引き出しが散らかりません。
Q. 子どもには何歳から使わせていいですか。
A. 年齢より、進行方向に指を置かないという約束を守れるかどうかで判断してください。守れるなら、まずは横に立って一緒に。
皮むきまで任せるなら三徳とペティどちら
ピーラーを買わないと決めたなら、その皮むきを引き受ける包丁を決めておく必要があります。ここで見るのは「どちらが優れているか」ではなく、皮むきという作業に限ってどちらが向くか、です。結論を先に言うと、皮むきだけの快適さならペティ、皮むきも含めて1本で回すなら三徳になります。
三徳を推す理由は単純で、皮むきも切る作業も1本でこなせるからです。刃渡り170〜180ミリのステンレス三徳は、キャベツの千切りから鶏肉の処理、じゃがいもの皮むきまで、家庭料理のほぼ全部をカバーします。刃元がしっかりしているので芽取りもできますし、峰でごぼうをこそげることもできます。1本で完結するというのは、収納も手入れも1つで済むということです。
ペティは、皮むきに限れば三徳より快適です。刃渡り120〜130ミリと短く軽いので、りんごやじゃがいもを手に持ったままむく作業がとても楽になります。ただし大きなキャベツや白菜、かぼちゃには刃渡りが足りません。ペティ1本だけで家庭料理を回すのは、作る料理をかなり選ぶことになります。だから順番としては、三徳が先、ペティは後です。
選ぶときのポイントは、切れ味が長持ちする鋼材かどうかです。家庭で扱いやすいのはモリブデンバナジウム鋼などのステンレス系で、錆びにくく、家庭用の砥石でも十分に研げます。私が日常で使っているのも同じ系統のステンレス三徳で、研ぎながら長く付き合えるのがこの価格帯のいいところです。皮むきまで任せるなら、切れ味が落ちにくいものを選んでおくと、包丁1本でいける実感が持ちやすくなります。
具体的な選択肢を1つ挙げるなら、ミソノ モリブデン鋼 三徳 180mmのような、業務用としても使われているステンレス三徳です。派手さはありませんが、刃持ちがよく、研ぎ直しながら長く使えます。予算別にもう少し広く比べたい人は、1万円前後の包丁をまとめた記事を見てもらうと、自分の予算に合う1本が見つかりやすいはずです。
結局ピーラーはいらないのかを整理
ここまでの話をまとめます。ピーラーはいらない、というのが多くの家庭にとっての答えです。三徳が1本あって、刃を止めて食材を回すという動かし方さえ覚えれば、じゃがいももにんじんも大根も、皮むきで困ることはありません。むしろ厚みを自分で決められるぶん、大根やごぼうのように「厚くむいたほうがおいしい」食材では包丁のほうが仕上がりがよくなります。
ただし、買う価値がある人もはっきりいます。下ごしらえの量が多い人、握力や手指に不安がある人、子どもや高齢の家族と一緒に台所に立つ人、そしてキャベツの千切りを日常的に作る人。この4つのどれかに当てはまるなら、迷わず買っていいと思います。そのときは、刃と本体の隙間が狭いか、刃を押してもガタつかないか、刃が斜めに入っているかの3つを店頭で確かめてください。値段の下限を割らないことだけ守れば、まず外しません。
そして忘れないでほしいのが、ピーラーは研げない道具だということです。切れ味が落ちたら買い替える前提で付き合うことになります。包丁は研げば戻ります。同じ金額を出すなら、長く使えるほうに寄せるという判断も十分ありえます。道具を増やすかどうかで迷ったときは、値段だけでなく、その先の維持まで含めて考えると答えが出しやすくなります。
包丁を何本持つべきかで悩んでいるなら、包丁は何本必要かを整理した記事もあわせてどうぞ。ピーラーの要否は、突き詰めると台所全体をどう組むかという話につながっています。道具の数を絞るほど、1本1本の切れ味が効いてくるようになります。
私は包丁が好きで、これまでに50本以上を使ってきましたが、その経験から言えるのは「道具は多いほど便利」ではないということです。少ない道具を気持ちよく使えている台所のほうが、料理は続きます。ピーラーがいらないと感じたなら、それは包丁の使い方が身についてきた証拠でもあります。あなたの料理の仕方に合わせて、遠慮なく引き算してみてください。

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