砥石の番手の選び方|ステンレス三徳は中砥1000番一本で足りる

中砥1000番の砥石と砥石台、隣にステンレス三徳包丁 包丁の研ぎ方・メンテ

包丁研ぎを始めようと砥石を探すと、必ず目に入るのが「#1000」「#3000」という表記です。数字が大きいほうがよく研げそう、くらいのイメージはあっても、じゃあ結局どれを買えばいいのか、家に何本そろえればいいのか。ここでつまずいて、砥石を買うのをやめてしまう人は少なくありません。

静岡で料理歴15年のコウスケです。包丁が趣味になって10年以上、荒砥から仕上げまでいろいろな番手を使ってきました。先に結論を言ってしまうと、家庭でステンレスの三徳包丁を使っている人なら、砥石の番手はそんなに悩まなくて大丈夫です。この記事では、番手という数字が何を表しているのかという基本から、家庭にとって本当に必要な一本、そして2本目に足すならどれか、という順で整理していきます。読み終わる頃には、砥石売り場で迷わず手を伸ばせるようになっているはずです。

  • 番手とは砥石の粒の細かさで、数字が大きいほど細かく仕上がる
  • 家庭のステンレス三徳なら、まず中砥#1000の一本でほぼ足りる
  • 2本目に足すなら仕上げ#3000〜、荒砥#200は家庭では出番が少ない
  • 番手で迷うくらいなら、研ぎ器という選択肢もある
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砥石の番手とは?選び方の前に知る数字の意味

まずは「番手」という数字そのものの話から。ここを分かっておくと、あとの選び方がすんなり頭に入ります。砥石のパッケージに書かれている#の数字には、ちゃんと意味があります。何となく大きいほうが良さそう、で選ぶと、家庭には使いどころのない砥石を買ってしまうこともあるんですね。この章では、番手が表しているもの、番手ごとの大まかな区分、そして番手が変わると研ぎ味がどう変わるのかを見ていきます。

番手の異なる砥石3枚(荒砥・中砥・仕上げ)とステンレス三徳包丁を並べた様子

砥石の番手とは?数字が大きいほど細かい

砥石の「番手(ばんて)」とは、砥石に含まれている砥粒(とりゅう)、つまり研ぐための粒の細かさを表す数字です。「#」に続けて数字で書かれ、この数字が大きいほど粒が細かく、小さいほど粒が粗くなります。ここが最初につまずきやすいところで、数字が大きい=粗い、と勘違いしている人が意外と多いです。実際は逆で、#200は粗く、#8000はとても細かい、と覚えてください。

なぜ数字が大きいほど細かいのか。これは番手が、粒をふるいにかけたときの網の目の数から決まっているからです。細かい網を通り抜けた粒ほど小さく、その網の目の多さが数字になる。だから数字が大きい=細かい粒、という関係になります。仕組みまで覚える必要はありませんが、「大きい数字=細かい=仕上げ寄り」という向きだけ頭に入れておくと、売り場で迷いません。

粒が粗い砥石は、金属を早く深く削ります。だから刃が欠けたときの修理や、大きく形を整えたいときに向いています。逆に粒が細かい砥石は、削る力は弱いかわりに、研いだ刃の表面をなめらかに整えて、切れ味を鋭くしてくれます。削る力の強さと、仕上がりのなめらかさは、番手を境にトレードオフの関係になっている、とイメージするとわかりやすいです。だからこそ、家庭で普段の切れ味を取り戻したいだけなら、いきなり細かすぎる番手を選ぶ必要はありません。削る力と仕上がりのちょうど真ん中あたりを選べば、日常の研ぎはそれ一枚でまかなえます。その「真ん中」がどこなのかは、このあとの章でくわしく見ていきます。

ちなみに、同じ「#1000」でも砥石によって研ぎ味が違って感じることがあります。これは番手の規格が国によって少し違ったり、砥石の硬さや粒の形が製品ごとに違ったりするためです。ただ、ここは家庭で研ぎを始めるうえでは気にしなくて大丈夫な話です。まずは番手=粒の細かさの目安、という理解で十分。細かい違いは、研ぎに慣れてきてから体感でわかるようになってきます。

砥石の番手一覧|荒砥・中砥・仕上げの目安

番手は連続した数字ですが、実際には役割ごとに大きく三つ(人によっては四つ)に区分けされています。この「砥石の番手一覧」を頭に入れておくと、自分がどのゾーンの砥石を探しているのかがはっきりします。区分の境目は製品やメーカーによって多少ずれますが、だいたい次のような目安です。

荒砥石(あらといし):#80〜#600前後
刃欠けの修理や、大きく形を整えるための砥石。削る力が強い。
中砥石(なかといし):#800〜#2000前後
普段の研ぎ直しの基準。切れ味を戻す主役。代表は#1000。
仕上げ砥石(しあげといし):#3000〜#8000前後
刃先をなめらかに整え、切れ味を一段上げる。
超仕上げ砥石:#10000以上
鏡面のような仕上がりを狙う、趣味・上級者向け。

この一覧を見て、まず注目してほしいのが「中砥石」のゾーンです。家庭で包丁の切れ味を保つための研ぎは、ほとんどがこの中砥石の範囲でまかなえます。荒砥石は刃が大きく欠けたときの緊急用、仕上げ砥石は切れ味にこだわりたい人の追加、超仕上げは正直、家庭ではまず出番がありません。区分の全部をそろえる必要はまったくないんですね。

研ぐときに複数の番手を使う場合は、粗いものから細かいものへ、番手を上げていくのが基本です。荒砥#200で形を整えて、中砥#1000で刃をつけて、仕上げ#5000でなめらかにする、という流れです。このとき番手を飛ばしすぎると、前の砥石でついた深い研ぎ傷が消えず、細かい砥石の効果が出にくくなります。ただこれは複数本を使いこなす段階の話で、最初の一本を選ぶだけなら、まだ気にしなくて大丈夫です。

ここまでで、「番手とは何か」「どんな区分があるか」の全体像は見えたと思います。次は、この区分ごとに研ぎ味がどう変わるのか、もう少し具体的に踏み込んでみます。番手の違いを体感でつかんでおくと、いざ2本目を買うときの判断が早くなります。

砥石の番手の違い|研削力と仕上がり

「砥石の番手の違い」を一言でまとめると、番手が上がるほど、削る速さは落ちて、仕上がりはなめらかになる、ということです。同じ包丁でも、どの番手で研ぎ終えるかによって切れ味の質が変わります。ここを知っておくと、自分がどこまでの切れ味を求めているのかで番手を選べるようになります。

たとえば#200の荒砥で研ぐと、金属はどんどん削れますが、刃の表面はザラザラで傷だらけになります。この状態でも切れることは切れますが、断面が荒く、食材への当たりも引っかかる感じが残ります。ここから#1000の中砥に移ると、荒砥の傷が消えて刃先が整い、家庭で使うには十分すぎる切れ味になります。日常の料理なら、この#1000で研ぎ終えるだけで、まったく問題ありません。

さらに#3000、#5000と仕上げ砥石へ進むと、刃の表面が鏡のように光り始め、切れ味に「鋭さ」だけでなく「なめらかさ」が加わります。トマトの薄い皮にスッと入る、鶏皮が逃げずに切れる、といった違いが出てくるのはこのあたりからです。ただし、この差を毎日の料理で実感できるかというと、正直、人によります。だからこそ仕上げ砥石は「必須」ではなく「余裕があれば」の2本目という位置づけになります。

もうひとつ大事なのが、番手が上がるほど削る力が弱くなるので、丸まった刃先を鋭く戻すのには時間がかかるという点です。切れ味が落ちた包丁を仕上げ砥だけで研ごうとしても、なかなか切れるようになりません。刃をつくり直すのは中砥#1000、それをなめらかに磨くのが仕上げ砥、と役割が分かれています。この役割分担が分かると、「切れ味が戻らないのは番手が合っていないからだ」と気づけるようになります。切れ味が戻らないときは、番手だけでなく研ぎ方や包丁の状態にも原因があることが多いので、まずは中砥#1000で基本どおり研げているかを見直してみてください。

家庭の包丁に合う砥石の番手の選び方

ここからが本題、「実際に何番を買えばいいのか」という砥石の番手の選び方です。結論から言うと、家庭でステンレスの三徳包丁を使っているなら、中砥#1000の一本でほぼ足ります。ここでは、なぜ荒砥や超仕上げが家庭では不要なのか、2本目を足すならどれか、そして鋼材や研ぎ方のスタイルによる選び方の違いまで、順に見ていきます。最後に、番手別のおすすめ砥石も紹介します。

水に濡れた中砥1000番の砥石と砥石台、手前にステンレス三徳包丁

砥石の番手の違いで荒砥は家庭で出番少

まず、家庭では出番が少ない番手からはっきりさせておきます。荒砥石、つまり#200〜#800あたりのゾーンです。この番手は刃こぼれの修理や、大きく形を整えるためのもので、削る力がとても強いのが特徴です。プロや、包丁を長年使い込んで刃の厚みを削り直す人には必要ですが、家庭の普段使いではほとんど使いません。

なぜ家庭で不要なのかというと、荒砥は削る力が強すぎて、慣れていないと刃を減らしすぎてしまうからです。ちょっと切れ味が鈍っただけの包丁を荒砥で研ぐと、必要以上に金属を削ってしまい、包丁の寿命を縮めることにもなりかねません。日常のメンテナンスに荒砥を持ち出すのは、はっきり言ってオーバーです。

「荒砥から順にそろえるのが正しい」と思い込んで、最初に3本セットを買ってしまう人がいますが、家庭ではまず必要ありません。刃が大きく欠けたときだけ、あとから足せば十分です。

じゃあ刃が欠けたらどうするのか。まな板に強くぶつけたり、硬いものを無理に切ったりして刃が欠けてしまったときは、たしかに荒砥の出番です。でもそれは頻繁に起こることではありません。欠けが起きたそのときに買い足せばいいので、最初の一本として荒砥を選ぶ必要はまったくないんですね。まずは中砥、荒砥は必要になってから。この順番を守るだけで、無駄な出費を避けられます。

それでも「荒砥は必要ない」と言い切ると、少し極端に聞こえるかもしれません。実際、専門店のなかには荒砥を重要視するところもあります。長く包丁を使い込むと、研ぎを繰り返すうちに刃の根元が厚くなってきて、中砥だけでは切れ味が戻りにくくなる時期が来るからです。この厚みを削り直すのに荒砥が要る、という考え方です。ただそれは何年も使い込んだ先の話で、研ぎを始めたばかりの家庭にとっては、まだ先の話。今の一本目には関係ないと考えて大丈夫です。

砥石は1000番がおすすめ|普段の主役

家庭の砥石選びで、最初の一本として文句なしにおすすめなのが中砥石、なかでも#1000です。「砥石は1000番がおすすめ」と多くの専門店が口をそろえるのには、ちゃんと理由があります。切れ味が鈍った包丁を、実用十分な切れ味まで戻せる。この日常メンテナンスの中心をまるごとカバーできるのが#1000だからです。

私自身、研ぎを始めたときに最初に買ったのも#1000の中砥でした。今でも一番出番が多いのはこの番手です。トマトがつぶれる、玉ねぎで涙が出る、鶏皮が滑って切れない。こういう「切れ味が落ちてきたな」というサインが出たときに、#1000でシャッと研げば、たいていの不満は解消します。家庭で困る場面のほとんどは、#1000一本で解決できると言い切っていいと思います。

選ぶときのコツは、ステンレス包丁を使っているなら、少し柔らかめで研ぎ汁が出やすいタイプを選ぶこと。柔らかい砥石は削る力が出やすく、硬いステンレスでも研ぎやすいからです。逆に硬い砥石は、研ぎに慣れた人向け。最初の一本としては、扱いやすい柔らかめのものが失敗しにくいです。基本の研ぎ方さえ押さえれば、#1000一本で切れ味はしっかり戻せます。

予算の面でも、#1000の中砥は手が届きやすいのが嬉しいところです。定番の商品でも三千円前後から手に入り、一枚あれば何年も使えます。数千円の投資で、切れない包丁のストレスから解放されると考えれば、コストパフォーマンスはかなり高いです。高い包丁を買い替えるより、まず今の包丁を#1000で研いでみる。それだけで見違えることも珍しくありません。

ひとつ気に留めておきたいのが、主役として使う番手ほど減りも早いことです。#1000は出番が多いぶん、使ううちに中央からへこんできます。そのまま研ぎ続けると刃先まで丸まってしまうので、ときどき平らに戻す手入れが要ります。見極め方と道具の選び分けは砥石の面直しのやり方をまとめた記事にまとめました。

ステンレスの三徳包丁を、実際に#1000一本で研いで切れ味を戻す流れは、ステンレス包丁の研ぎ方の記事で15度の角度の作り方から具体的に紹介しています。この記事は「どの番手を選ぶか」の話ですが、選んだあとに「どう研ぐか」までつなげて読むと、砥石が手元に届いた日から迷わず使えます。番手選びと研ぎ方はセットで押さえておくと安心です。

砥石1000番のおすすめの次は仕上げ砥

#1000で研ぎに慣れてきて、「もう少し切れ味を上げたい」と思ったら、次に足すのは仕上げ砥石、#3000〜#5000あたりです。これが2本目の定番になります。荒砥ではなく仕上げ砥を2本目に選ぶのは、家庭の使い方だと、刃を削り直す機会より、切れ味の質を上げたい場面のほうが多いからです。

仕上げ砥石の役割は、#1000でついた研ぎ傷をさらに細かく整えて、刃先をなめらかに磨き上げることです。切れ味に「鋭さ」だけでなく「持続性」が加わり、研いだあとの切れ味が長持ちしやすくなります。トマトや鶏皮のような、切れ味の差が出やすい食材を切ったときに、「あ、違う」と感じられるのがこのあたりです。

ただ、ここでも強調しておきたいのは、仕上げ砥石は「あれば嬉しい」ものであって「なければ困る」ものではないということ。家庭料理を気持ちよく作るだけなら、#1000一本でまったく問題ありません。仕上げ砥は、研ぎそのものが楽しくなってきて、もう一歩踏み込みたくなった人へのごほうびのような存在です。焦って最初からそろえる必要はありません。

2本目に迷ったら、#3000前後の仕上げ砥がおすすめです。#8000や#10000は仕上がりこそ美しいですが、家庭料理で違いを実感しにくく、まずは#3000で十分。物足りなくなってから上の番手を検討すれば遅くありません。

使うタイミングとしては、#1000で刃をつけたあと、仕上げに軽く#3000をかける、という流れになります。このとき力を入れてゴリゴリ研ぐ必要はなく、#1000の研ぎ傷をなでるように消していくイメージです。仕上げ砥は削るというより磨く道具なので、優しく当てるのがコツ。ここで力むと、せっかくの細かい仕上げがかえって荒れてしまいます。

逆に言えば、荒砥や超仕上げまで一気にそろえるのは、家庭ではやりすぎです。#1000を主役に、余裕が出たら#3000。この二段構えが、家庭にとってちょうどいい落としどころだと、いろいろ試してきた実感として思います。

鋼材別の包丁と砥石の選び方の違い

番手そのものとは少し別の軸ですが、「包丁と砥石の選び方」で意外と効いてくるのが、包丁の鋼材との相性です。同じ#1000でも、研ぐ包丁の鋼材によって、選ぶと快適な砥石が変わってきます。ここを知っておくと、「研ぎにくいな」という違和感の理由がわかります。

まずステンレスの包丁。家庭で一番多いタイプですね。ステンレスは硬めで、しかも粘りがあるので、研ぐには削る力のある砥石が合います。先ほど触れた、柔らかめで研ぎ汁が出やすい中砥がおすすめなのはこのためです。硬すぎる砥石だと、なかなか刃がつかず、研ぎに時間がかかってしまいます。

一方で、鋼(はがね)の包丁は比較的柔らかいので、砥石は削る力がそこまで強くなくても大丈夫。むしろ研ぎ味のなめらかな砥石を選ぶと、中砥だけでも仕上げに近いきれいな刃がつきます。セラミック包丁は例外で、これは一般的な砥石では研げず、専用のダイヤモンド砥石が必要になります。自分の包丁がどの鋼材かを知っておくと、砥石選びの精度がぐっと上がります。

もう少し補足すると、砥石の削る力は番手だけでなく、砥石そのものの硬さや粒の素材でも変わります。同じ#1000でも、硬めで削る力を抑えたものと、柔らかめで削る力の出やすいものがあり、硬いステンレスには後者が合う、という関係です。ただ、ここまで細かく見分けるのは研ぎに慣れてからで十分。最初は「ステンレスなら柔らかめの中砥」という目安さえ押さえておけば、大きく外すことはありません。

とはいえ、家庭のステンレス三徳を想定するなら、話はシンプルです。柔らかめの#1000中砥を一本。これでほとんどの場面は足ります。青紙・白紙・ステンレスといった鋼材の違いそのものが気になってきたら、そこから調べ始めると、自分の包丁の性格が見えてきて、砥石との相性も納得しやすくなります。まずは深く考えず、手持ちの包丁がステンレスかどうかだけ確認できれば十分です。

包丁の砥石は初心者に両面が正解か

「包丁の砥石は初心者にどれがいいか」と聞かれて、よく候補に挙がるのが、片面が#1000、もう片面が#3000や#6000になっている両面砥石です。一枚で中砥と仕上げの二役をこなせるので、収納場所も予算も抑えられて、たしかに魅力的に見えます。実際、初心者向けとして売られていることも多いです。

両面砥石のいいところは、なんといっても手軽さです。これ一枚あれば、普段の研ぎから仕上げまで一通りできる。砥石を何枚も置く場所がない家庭や、まず一枚で試してみたいという人には、合理的な選択だと思います。「単品を複数買うのはハードルが高い」という人にとって、入口としてはよくできた形です。

ただ、正直に言うと、私は「まずは#1000の単品一枚」でもいいと思っています。理由は、家庭で本当に必要なのは中砥#1000の面がほとんどで、両面の仕上げ側はそれほど使わないことが多いからです。それなら、使う面の性能がしっかりしている単品のほうが、研ぎやすさで有利なこともあります。両面は便利さ、単品は使い勝手、どちらを取るかという選択です。

もうひとつ、両面砥石を選ぶときに見ておきたいのが、面と面の番手の差です。#1000と#3000のように差が小さめの組み合わせは、家庭で一番使う「中砥から軽い仕上げ」までを自然にカバーします。一方、#1000と#6000のように差が大きいものは、仕上げ側がかなり細かく、家庭では使いこなす機会が少なめです。自分がどこまでの切れ味を求めるかで、両面の番手構成を選ぶと失敗しにくくなります。

まとめると、収納と予算を優先するなら両面、研ぎやすさとステップアップを見据えるなら#1000単品から。どちらを選んでも大きな失敗にはなりません。大事なのは「まず一枚買って、研ぎ始めてみること」で、番手の完璧な組み合わせを最初から狙う必要はありません。使ってみて足りないと感じたら、そのとき足せばいいだけです。

番手で迷うなら研ぎ器という選択肢

ここまで番手の話をしておいて何ですが、「そもそも砥石で研ぐのが面倒」「番手を選ぶ以前に、砥石を使う自信がない」という人もいると思います。そういう場合は、無理に砥石を選ばず、研ぎ器(シャープナー)という選択肢もあります。番手を気にしなくていい、という意味では、これはこれで正解のひとつです。

研ぎ器は、溝に包丁を数回すべらせるだけで切れ味を戻せる道具です。砥石のように角度をキープする技術がいらないので、誰でも同じ結果を出しやすいのが強みです。「トマトがつぶれるのを今すぐ何とかしたい」「砥石を出して水に浸けて、という手間が続かない」という人には、研ぎ器のほうが現実的なこともあります。

研ぎ器は手軽な反面、砥石ほど鋭い刃はつきにくく、切れ味の持続もやや短めです。「手軽さ最優先なら研ぎ器」「切れ味と長持ちを求めるなら砥石」と、求めるものに合わせて選ぶのがコツです。

それに、研ぎ器から入って切れ味の気持ちよさを知ってから、砥石に進むという順番もアリだと思います。研ぎ器でこまめに整えつつ、月に一度くらい砥石でしっかり研ぐ、という併用も現実的です。番手を選ぶ砥石は少しハードルが高く感じるかもしれませんが、研ぎ器なら今日からすぐ始められます。まずは切れ味を取り戻して、料理のストレスを減らすことを優先しても、まったく問題ありません。

研ぎ器にもいくつかタイプがあって、選び方のポイントがあります。どんな研ぎ器が使いやすいのか、切れ味がどのくらい戻るのかは、研ぎ器のおすすめと選び方をまとめた記事で具体的に紹介しています。砥石の番手で迷って前に進めなくなるくらいなら、まず研ぎ器で切れ味を取り戻して、料理を気持ちよく続けるほうがずっと建設的です。砥石はそのあと、興味が出たら始めればいいんです。

番手別おすすめ砥石|包丁の砥石の番手

最後に、番手別のおすすめ砥石を具体的に挙げておきます。「包丁の砥石は番手で選ぶ」といっても、実際の商品名がわからないと動けませんよね。ここでは、家庭で使いやすい定番を、番手ごとに紹介します。まずは中砥#1000の一本、余裕が出たら仕上げや両面、という優先順位で見てください。

◆ まずはこの一本|中砥#1000
シャプトン 刃の黒幕 オレンジ 中砥#1000(Amazon)
研ぎ味が安定していて、削る力もしっかりある定番の中砥です。水に浸けおきしなくてもすぐ使えるタイプなので、思い立ったときにサッと研げるのが家庭向き。最初の一本に迷ったら、これを選んでおけば間違いが少ないです。ステンレスの三徳包丁を普段使いで研ぐなら、当面この一枚で困りません。

◆ 一枚で二役|両面#1000/#6000
キング 両面砥石 KW-65 #1000/#6000(Amazon)
昔から家庭で使われてきた定番の両面砥石です。片面#1000で普段の研ぎ、もう片面#6000で仕上げまでこなせて、収納も予算も一枚で済みます。まず一枚でひととおり試したい、という人に向いています。柔らかめで研ぎ汁が出やすく、初心者でも刃がつきやすいのも安心です。

◆ 中砥から仕上げ入門まで|両面#1000/#3000
スエヒロ 両面砥石 SKG-24 #1000/#3000(Amazon)
#6000は家庭にはやや細かすぎる、という人には、仕上げ側が#3000のこちらがちょうどいいバランスです。#1000で刃をつくり、#3000でなめらかに整える、という家庭で一番使う組み合わせが一枚に収まっています。仕上げの入門としても扱いやすい番手構成です。

切れ味そのものより「もう研ぐのが面倒、最初からよく切れる包丁が欲しい」と感じたら、砥石より買い替えが近道なこともあります。予算1万円前後でよく切れる一本は、1万円のおすすめ包丁をまとめた記事で用途別に紹介しています。

どれを選んでも、まずは#1000の面をしっかり使うのが基本です。番手をたくさんそろえることより、一本を使いこなすほうが、切れ味への近道になります。

まとめ|砥石の番手の選び方はこれで十分

ここまで、砥石の番手の選び方を、番手の意味から家庭に必要な一本まで整理してきました。数字の羅列に見えていた砥石売り場も、区分と役割がわかれば、そんなに怖いものではありません。最後に、家庭で迷わないための要点をまとめておきます。

まず、番手とは砥石の粒の細かさで、数字が大きいほど細かく、仕上げ寄りになります。区分は荒砥・中砥・仕上げの三つが基本。そして家庭でステンレスの三徳包丁を使うなら、選ぶべきは中砥#1000の一本です。これで日常の切れ味の悩みは、ほとんど解決します。荒砥#200や#6000超の超仕上げは、家庭では基本的に不要。刃が欠けたときや、もっと切れ味を追求したくなったときに、あとから足せば十分です。

2本目を足すなら、荒砥ではなく仕上げ#3000〜。一枚で済ませたいなら両面砥石という手もあります。研ぐこと自体が面倒なら、研ぎ器に頼るのも立派な選択です。大切なのは、完璧な番手の組み合わせを最初からそろえることではなく、まず一本手に入れて、研ぎ始めてみることです。使っているうちに、自分に必要な番手が自然と見えてきます。

番手選びで手が止まってしまう人ほど、「正解を全部そろえてから始めよう」と考えがちです。でも実際は、一本で研いでみて初めて、自分の包丁と使い方に何が足りないかが見えてきます。頭で完璧を目指すより、手を動かすほうが早い。これは研ぎにかぎらず、道具まわり全般に言えることかもしれません。

私も最初は#1000一本から始めて、そこから少しずつ番手を増やしてきました。でも振り返ってみると、家庭料理で一番活躍しているのは、今でもあの#1000です。あなたも、まずは一本。そこから包丁研ぎの気持ちよさを、ゆっくり味わってもらえたらうれしいです。よく切れる包丁で作る料理は、それだけで少し楽しくなりますから。

一方で、砥石を使いこなす前にまず「研ぎ器(シャープナー)でいいのか?」と迷う方もいます。そういった方には研ぎ器をやめたほうがいい場合と使ってよい場面の違いについてまとめた記事が役立つかもしれません。

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