包丁を研いでも研いでも、思ったところまで切れ味が戻らない。そんなときに疑うべきは、腕ではなく砥石のほうかもしれません。静岡で料理歴15年のコウスケです。独学で研ぎを覚えた頃の私は、刃先がガタガタになるたびに「自分の角度がぶれているせいだ」と落ち込んでいました。ところが原因の半分は、真ん中がへこんだ砥石をそのまま使い続けていたことでした。
砥石の面直しは、動作そのものは拍子抜けするほど単純です。平らなものを押し当てて擦る、基本はそれだけ。それなのに実際にやろうとすると、「今の砥石は本当に直す必要があるのか」「専用の砥石を買うべきか、家にあるもので済ませていいのか」「どのくらいの間隔でやるのか」で手が止まります。手順を見せてくれる動画はたくさんあるのに、その手前と後ろがすっぽり抜けているんですね。
そこでこの記事では、削り始める前の見極めから、道具4種類の正直な比較、そしてやり過ぎて損をしないための線引きまでを順番に整理しました。私が10年以上砥石を使ってきて「これを先に知りたかった」と思ったことを、そのまま並べています。
- 鉛筆の格子と金属定規を使って、面直しが今必要かどうかを1分で判断できる
- 専用の面直し砥石・ダイヤモンド・耐水ペーパー・コンクリートブロックの4択を、費用と平面精度で比べられる
- 荒砥・中砥・仕上げ砥で違う、面直しの間隔の目安がつかめる
- 削りすぎ、傾いたまま平ら、砥泥の後始末という、手順書に載らない失敗を避けられる
砥石の面直しのやり方と必要性の見極め
先に道具の話をしたくなりますが、順番としては「そもそも直す必要があるか」を見る作業が先です。凹んでいない砥石を削るのはただの寿命の前借りですし、逆に凹みに気づかないまま研ぎ続けると、包丁のほうが取り返しのつかない形になっていきます。ここでは面直しという作業の中身を押さえたうえで、判定の方法と実際の削り方を順に見ていきます。
面直しとは砥石を平らに戻す作業
面直しは「めんなおし」とも「つらなおし」とも読みます。やっていることは名前のとおりで、使ううちに平らでなくなった砥石の研ぎ面を、もう一度平らな状態へ戻す作業です。専用の道具は面直し砥石と呼ばれ、いわば砥石のための砥石にあたります。修正砥石、ドレッシングストーンといった呼び方をされることもあります。これは包丁を研ぐための砥石ではありません。うっかり刃を当てると粒が粗すぎて傷だらけになるので、そこだけは最初に押さえておいてください。
なぜ砥石が平らでなくなるのかというと、砥石が削られながら仕事をする道具だからです。砥石の表面には砥粒という細かい粒が並んでいて、包丁と擦れるときに刃をわずかに削ります。役目を終えた砥粒は本体から剥がれ落ち、削れた金属や水と混ざり、研ぎ汁になって出てきます。この「剥がれて新しい粒が顔を出す」という仕組みがあるからこそ、砥石はいつまでも研げるわけです。つまり減るのは欠陥ではなく、正常に働いた証拠なんですね。
問題は、減り方が均一にならないことです。包丁を前後させると、どうしても砥石の中央付近ばかりを通ります。四隅や端は使われる頻度が低い。結果として真ん中から先に沈み、横から見ると皿のように窪んだ形へ近づいていきます。片手に力が入るくせがあると、左右のどちらかだけが低くなることもあります。
窪んだ面で研ぐと何が起きるか。刃を当てている面が反っているので、刃先も同じように丸まっていきます。切刃が平らに当たらず、狙ったところに刃が乗らない。和包丁の裏のように平面が命の面を持つ包丁では、影響はもっと直接的です。切れないから研ぐ、研ぐほど刃が丸まる、さらに切れなくなるという悪循環に入ると、いくら時間をかけても報われません。私が独学の頃に陥っていたのは、まさにこれでした。角度の練習を何十時間積んでも、土台が反っていれば結果は出ないんです。
鉛筆の格子で凹みを確認する方法
凹んでいるかどうかを一番わかりやすく可視化できるのが、鉛筆で格子を描く方法です。砥石の研ぎ面全体に、鉛筆で縦横の線を引いて網目状にします。線の間隔は1〜2センチ程度で十分で、塗りつぶす必要はありません。ただし薄いとすぐ見えなくなるので、HBよりBや2Bの濃い鉛筆のほうが作業は楽です。砥石が乾いていると線が乗りにくいため、軽く湿らせてから描くと定着します。
この状態で面直しを始めると、高いところから先に削られて線が消えていきます。逆に、いつまでも線が残っているところが低い、つまり凹んでいる部分です。線が全面から消えた時点が、平らになった合図になります。途中で線が薄くなってきたら描き直し、また擦る。これを繰り返せば、感覚に頼らず作業の終わりを判断できます。
面白いのは、この方法が診断だけにも使えることです。格子を描いて、面直し砥石を数往復だけ軽く当ててみる。それで線がほぼ均一に薄くなるなら、その砥石はまだ十分平らです。中央だけくっきり線が残るなら、皿状に窪んでいる。片側だけ残るなら、力のかけ方が偏っている証拠です。削る前に自分の研ぎ癖まで見えてしまうので、私はしばらく使っていない砥石を出してきたときは、まずこれをやります。
油性ペンを使う人もいます。水に強くて研ぎ汁でも消えにくいのが利点ですが、砥石に色が残りやすく、消え際の見分けが鉛筆よりつきにくいと感じています。仕上げ砥のように目が細かくて色が沈みやすい砥石だと、なおさら判断しづらい。手に入りやすさも含めて、最初は鉛筆で問題ありません。
描き直す回数の目安も書いておきます。浅い凹みなら、一度描いて一度消えれば終わりです。しばらく放っておいた砥石だと、二回か三回は描き直すことになるはずです。ここで焦って、線が残っているのに「だいたい平らだろう」と切り上げると、残っていた低い部分がそのまま次の研ぎに効いてきます。最後の一回は、線が消えるところまで付き合う。逆に、四回も五回も描き直しているなら、それは道具のほうを見直す合図だと思ってください。

格子は「面直しの進み具合を見る目盛り」であって、線が消えた=完璧な平面という保証ではありません。より厳密に確かめたいときは、次に紹介する定規のチェックと組み合わせてください。
定規を当てて隙間を見るチェック法
鉛筆の格子が「削りながら見る」方法だとすれば、金属定規を当てるのは「削る前に見る」方法です。用意するのは、ステンレスの直定規のように縁がまっすぐな金属の板。これを砥石の研ぎ面に垂直に立てて当て、砥石ごと明るいほうへ向けます。定規と砥石のあいだに隙間があれば、そこから光が漏れて筋のように見えます。光がまったく漏れなければ、その方向についてはほぼ平らということです。
当てる向きは1方向では足りません。長い辺に沿って縦、短い辺に沿って横、そして対角線に2本。この4方向を見ると、凹みの形まで見当がつきます。縦横どちらも中央で光るなら皿状の窪み。片側だけ光るなら傾き。端の数センチだけ光るなら、砥石の端を使いすぎて角が落ちた状態です。形がわかると、どこを重点的に当てればいいかが決まるので、無駄に全体を削らずに済みます。
見るときの環境も少しだけ効きます。手元が暗いと、細い光の筋は見えません。窓や照明を正面に置き、定規の向こう側から光が来る状態にすると判定しやすくなります。砥石は濡らさず、乾いた状態で。水が残っていると隙間を埋めてしまい、光が漏れないんですね。
金属定規がなければ、プラスチックの下敷きやカードでも輪郭が出ればある程度は代用できます。ただし柔らかい素材はわずかに反るので、判定の精度は落ちます。私は文具の30センチステンレス定規を砥石専用にして、研ぎ場の引き出しに入れっぱなしにしています。数百円の道具ですが、これがあるかないかで面直しの判断がまるで違いました。
もうひとつ、砥石ではなく包丁側の症状から逆算する見方も知っておくと便利です。研いでいるのに刃先の中央だけ丸い、あるいは切っ先やアゴの近くだけいつまでもカエリが出ない。研ぎ汁の出方が場所によって明らかに違う。砥石の上で包丁がカタカタと落ち着かない。こうした違和感は、砥石の面が崩れているときによく出ます。逆に言えば、研ぎがうまくいかない日は、腕を疑う前に砥石を疑ったほうが早いということです。ここを知らずに角度の練習ばかりしていた時期が、私にはありました。
面直し砥石を使う基本の手順
判定が済んだら、実際に削ります。使うのは専用の面直し砥石が最も素直です。まず面直し砥石と、直したい砥石の両方に水を含ませます。目安は10分ほどとされることが多く、水に沈めたときに出ていた気泡が止まったら準備完了と考えて構いません。ただしすべての砥石が水に浸けてよいわけではない点は要注意です。長時間の吸水を前提にしない造りの砥石もあり、そうしたものは表面を濡らす程度にとどめます。手元の砥石の説明書きを一度確認しておくと安心です。
次に置き方です。小型の面直し砥石なら、直したい砥石を台の上に固定し、面直し砥石を手に持って当てます。据え置き型の大きな面直し砥石なら逆で、面直し砥石を下に置き、直したい砥石のほうを手に持って擦りつけます。どちらの場合も、下になる側が動かないことが前提です。濡れ布巾や砥石台を使い、シンクの縁でぐらつかない場所を選んでください。台がわずかに傾いていると、その傾きがそのまま砥石に転写されます。
動かし方は、水を流しながら前後にまっすぐ。力は押しつけるというより、体重を軽く預ける程度で十分です。強く押しても速くはならず、削り粉が逃げ場をなくして滑るだけです。数十往復したら鉛筆の格子を確認し、残り具合を見てまた擦る。この繰り返しです。削り粉と水が混ざった白い泥は、面直しの摩擦を助ける働きもあるので、こまめに流しすぎず、詰まってきたと感じたときに洗う程度でかまいません。
作業時間の見当もつけておくと気が楽です。研ぐたびに軽く当てている砥石なら、格子が消えるまで一分もかかりません。数か月ぶりに出してきた中砥だと、十分前後は覚悟したほうがいい。何十分やっても中央の線が消えないようなら、それは道具の力不足か、当てている面のほうが凹んでいるかのどちらかです。進まないと感じたら、力を足すのではなく道具を疑う。腕力で押し込んでも砥石が滑るだけで、削れる量はほとんど変わりません。
凹みが深くて何十分やっても線が消えないときは、研磨材の金剛砂を面に振りかけると作業が進みます。ただし粒が残ったまま包丁を研ぐと刃を傷めるので、終わったら砥石も手も、シンクも含めて残さず洗い流してください。

斜め・上下を入れ替えて削るコツ
前後にまっすぐ動かすだけでは、実はきれいな平面になりません。理由は単純で、人間の手は左右で力が均等にならないからです。利き手側に力が入れば、その側だけがよく削れます。何十往復もすれば、その差は面として現れます。ここを補正するのが、向きを変えながら削るという工夫です。
やり方は難しくありません。まず前後に何十往復かしたら、砥石の上下を180度ひっくり返して、同じように前後させます。これで手の力の偏りが打ち消し合います。次に砥石を斜めに置き、四隅が対角線上に並ぶ向きにして前後。さらに反対の斜めに持ち替えて前後。縦・逆縦・斜め・逆斜めの4方向をひと巡りとして回すと、偏りがかなり消えます。小型の面直し砥石を手に持つ場合は、円を描くように動かすのも有効です。
忘れられがちなのが、面直し砥石そのものも減るという事実です。石でできている以上、当てられた側だけが削れるわけではありません。同じ場所ばかり使っていると面直し砥石が先に凹み、凹んだ道具で平面を作ろうとする、という本末転倒に陥ります。だから当てる位置を毎回ずらし、面直し砥石の全面を均等に使うようにします。溝が彫られている面直し砥石が多いのは、削り粉を逃がして砥石同士が吸い付くのを防ぐためで、この溝が浅くなってきたら道具側の交換時期のサインです。
この点でダイヤモンドタイプは事情が違います。金属の台にダイヤモンドの粒を電着した構造なので、石のようには変形しません。「平面を作る道具の平面が崩れない」というのは、思っている以上に効いてきます。荒砥や中砥のように減りの速い砥石ほど、崩れない基準がそばにあると安心だ、という声はよくわかります。
もうひとつ、複数の砥石を続けて直すときの順番も覚えておくと手戻りがありません。荒砥から仕上げ砥へと粗いほうから当てていくと、面直し砥石の表面に残った粗い粒が、あとから当てる仕上げ砥に傷を残すことがあります。粗い砥石を直したあとは道具側を一度きれいに洗い流すか、細かい砥石から先に片づける。仕上げ砥だけは最後の仕上げに別の細かい面を当て直すという人もいて、これは目の細かさをそろえたいからです。細かい話に見えますが、仕上げ砥に入った深い傷は、消すためにまた削る手間が増えるんです。
面取りと目詰まり取りまで済ませる
面が出たら終わり、ではありません。面直しの直後の砥石は、角が刃物のように立っています。この状態で包丁を研ぐと、まず自分の手が危ない。研いでいる最中に指の腹が角に当たって、うっすら切れることがあります。そして砥石の角に刃先が引っかかると、包丁のほうに小さな欠けを作ります。面直しの最後には必ず角を落とす、と覚えてください。作業は簡単で、面直し砥石を角に斜めに当てて数回擦り、四辺と四隅にわずかな丸みをつけるだけです。数十秒で終わります。
もうひとつ、面直しとよく混同されるのが目詰まりの解消です。こちらは形の問題ではなく表面の問題で、砥粒の隙間に削りかすが詰まり、包丁が滑って研げなくなる状態を指します。目立てやドレッシングと呼ばれる作業で、詰まった表層をわずかに削って新しい砥粒を出してやります。面直し砥石でも同じことができるので、実際には面直しのついでに解消していることが多いはずです。ただし目的は別物なので、「滑って研げない」ときと「形が崩れている」ときを切り分けて考えると、必要以上に削らずに済みます。
作業が終わったら、砥石と面直し砥石の両方を流水で洗います。表面に残った砥泥をそのままにすると、乾いて固まり、次に使うときの目詰まりを招きます。洗ったあとは陰干し。直射日光に当てたり、湿気の多い場所に置いたままにすると、ひび割れの引き金です。乾かす時間は季節でだいぶ変わり、梅雨どきなら丸一日置いても中まで乾いていないことがあります。厚みのある砥石ほど、表面が乾いても内側に水が残ると考えておいてください。
面取りについて、もう少しだけ補足します。落とす量は、指でなぞって角の存在がわかる程度でかまいません。丸めすぎると使える面積が減るので、削るのは角の稜線だけです。特に和包丁の裏を当てる砥石は、有効な平面が狭くなるほど扱いづらい。四辺の長い部分は軽く、四隅はほんの数回。買ったばかりの砥石も角が立ったままのことが多いので、おろす前に同じ処理をしておくと最初の一本目から安心して研げます。
保管でよく聞かれるのが積み重ねです。砥石は見た目より重く、下になったものが自分の重みで割れることがあります。棚に並べるなら立てるか横並びにして、重ねないほうが安全です。乾かしたあとに新聞紙で包んでおくと、湿度の急な変化をいくらか和らげてくれます。
砥石の面直しのやり方で迷う道具選びと頻度
ここからが、動画ではなかなか語られない部分です。面直しの道具には専用品から代用品まで幅があり、値段も数百円から一万円台まで開きます。どれを選んでも面は出せますが、かかる時間と出せる精度、そして道具自体の寿命がまるで違う。加えて「どのくらいの間隔でやるのか」が決まらないと、結局また放置して、次に大仕事が待っています。手元の砥石で試してきた範囲と、調べてわかったことを分けて並べます。
面直し砥石とダイヤモンド砥石の違い
選択肢は大きく4つあります。専用の面直し砥石、ダイヤモンドの平面プレート、耐水ペーパーと平らな板の組み合わせ、そしてコンクリートブロックです。それぞれの性格を並べてみます。
| 道具 | 費用の目安 | 平面の精度 | 手軽さ | 道具自体の寿命 |
|---|---|---|---|---|
| 専用の面直し砥石 | 千円台〜 | 十分。ただし自分も減る | 買ってすぐ使える | 使うほど凹むので管理が要る |
| ダイヤモンドプレート | 数千円〜一万円台 | 高い。基準として使える | 水をかけて擦るだけ | 変形しないが粒は徐々に減る |
| 耐水ペーパー+平板 | 数百円〜 | 板の平面度しだい | 板の用意が要る | ペーパーは消耗品 |
| コンクリートブロック | 数百円 | 低い。応急処置向き | 屋外向き。粉が出る | ブロック側が先に凹む |
専用の面直し砥石は、最初の一つとして素直な選択です。溝が彫られていて吸い付きにくく、包丁の研ぎと同じ感覚で扱えます。弱点は自分も石であること。使い続ければ道具側が凹み、そのときは別の面直し砥石と擦り合わせるか、買い替えるかの二択です。
ダイヤモンドプレートは値段が上がるぶん、削る速度と平面の安定が別次元です。半年ためこんだ凹みでも短時間で片づくので、面直しに対する心理的なハードルが下がります。私自身、面直しを面倒だと感じていた時期は間隔が空き、間隔が空くほど大仕事になる、という悪循環にはまっていました。作業が軽くなると回数が増える。回数が増えるほど一回が軽くなる。この逆回転に入れるかどうかが、道具に払う差額の中身だと思っています。
※本記事にはプロモーションが含まれます。紹介する商品は広告の有無にかかわらず筆者が自分で選んでいて、順番や評価が広告主によって変わることはありません。仕様・価格・在庫は掲載時点の情報なので、購入前に販売ページで最新の内容をご確認ください。
まず一つ買うなら:ナニワ研磨工業 面直し用砥石(溝入り)QA-0160
販売店の製品情報によれば粒度は#60、寸法は170×55×30mm。家庭用の中砥に当てるにはちょうどいいサイズです。仕上げ砥に当てるなら、より細かい番手の面直し砥石を別に用意すると傷が残りません。メーカーの案内では、使う前に10分ほど水に浸けてから使うタイプ。溝が彫られているので砥石に吸い付きにくく、最初の一本として扱いやすい構成です。
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速さと平面を優先するなら:ツボ万 アトマエコノミー本体 荒目(ATM75-1.4E)
販売店の製品情報によれば、粒度は荒目#140、寸法は75×210×12mm。ダイヤモンドの粒を分散させて電着した薄い板を、アルミの台金に貼って使う替刃式で、目が減ったら板だけ交換できます。石ではないので、当てているうちに道具側が凹む心配がありません。在庫が動きやすい商品なので、見当たらないときは同シリーズの中目や替刃単体も候補になります。
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ほかの型番や価格帯も見比べたい方は、面直し砥石の一覧もどうぞ。

耐水ペーパーやブロックで代用する
専用品を買う前に、家にあるもので試したいという気持ちはよくわかります。代用は可能です。ただし条件があって、それを外すと直すどころか悪化します。
耐水ペーパーを使う方法から。厚手のガラス板や御影石のタイル、平らな定盤のような「確実に平らな板」を用意し、そこへ#120から#400程度の耐水ペーパーを敷きます。板もペーパーも水で濡らしておくと、表面張力で貼り付いてずれません。あとは砥石の研ぎ面をペーパーに当て、向きを変えながら擦るだけです。この方法の精度は、板の平面度をそのまま引き継ぎます。反ったベニヤやまな板では、その反りが砥石に写るので意味がありません。もうひとつの弱点は消耗の速さで、砥石は思った以上に速くペーパーの目を潰します。一枚で全部やろうとせず、数枚用意しておくつもりでいたほうが結果は早く出ます。
コンクリートブロックは、昔から知られている手です。屋外で豪快に削れますし、費用はほとんどかかりません。ただ、これは応急処置と割り切るべき方法です。ブロックは砥石より柔らかいので、擦っているうちにブロック側が先に凹みます。凹んだ面を基準にしてしまえば、砥石も同じ形になる。加えて粒が粗く、仕上げ砥のように目の細かい砥石に当てると深い傷が入り、それを消すためにまた削る、という遠回りをします。使うなら荒砥まで、と考えておくのが無難です。
同じ番手の砥石同士を擦り合わせる、いわゆる共擦りという手もあります。二枚の面が互いを削り合うので、理屈のうえでは平面に近づきます。実際、荒砥を二枚そろえて交互に擦り合わせる運用は昔から使われてきました。注意点は、粒度が違うもの同士では成立しないことと、面の詰まりが早いことです。安価な砥石を面直し用に転用する話もときどき見かけますが、目が詰まって数回で使えなくなったという声もあります。手元にあるもので試すのは自由ですが、続けるつもりなら専用品に落ち着くほうが結局は安上がりだと感じています。
どの代用方法でも共通するのは、「平らでないもので平面は作れない」という一点です。当てる側の平面度を確認できないなら、その方法は選ばないほうが安全です。
面直しの頻度は研ぐ回数で決まる
「どのくらいの間隔でやればいいですか」は、面直しでいちばん多い疑問だと思います。答えは番手と使い方で変わるので、目安を分けて考えるのがわかりやすいはずです。
荒砥は減りが速い砥石です。刃こぼれを直したり、大きく形を整えたりするために粗い粒で削るので、一度の作業でもはっきり形が変わります。荒砥は使ったその日に直すくらいの気持ちでちょうどいい。中砥は普段の研ぎ直しの主役で、使用時間もいちばん長い。包丁を数本まとめて研いだ日や、しばらく放っておいた包丁を戻した日は、終わりに軽く当てておく。日常的に一本を短時間研ぐだけなら、数回に一度でも追いつきます。
仕上げ砥は少し性格が違います。硬くて減りにくいものが多い一方、求められる平面の精度は最も高い。特に和包丁の裏を当てるなら、わずかな反りが刃線に出ます。減っていないからやらなくていい、ではなく、研ぐ前に軽く当てて基準を作ってから使うと考えるほうが結果は安定します。当てる時間そのものは短くて済みます。
研ぐ本数によっても変わります。家庭で三徳を一本、月に一、二度研ぐだけなら、そこまで神経質にならなくて構いません。逆に、包丁を数本まとめて面倒を見る日や、出刃や柳刃の裏を当てる日は話が別です。和包丁の裏は平面がそのまま切れ味に出るので、裏を当てる日は面直しを済ませてから始めるようにしています。ここを飛ばすと、裏に狙っていない丸みがついて、あとで直すのに何倍も時間がかかりました。
もっと本質的な話をすると、面直しは「凹んでから直す」より「凹ませない」ほうが総時間は圧倒的に短くて済みます。数回分の減りなら軽く数十往復で戻りますが、半年ためた凹みは何十分もかかり、腕もパンパンです。しかも深く削るぶん砥石の寿命も一気に縮む。私が研ぎ終わりに毎回軽く当てる習慣に切り替えたのは、この差に気づいてからでした。ちなみに包丁そのものをどのくらいの間隔で研ぐかは砥石の話とは別軸なので、そちらは包丁を研ぐ頻度をまとめた記事のほうが具体的です。番手をどう組むかで面直しの手間も変わってくるため、これから砥石をそろえる方は砥石の番手の選び方の記事もあわせてどうぞ。
削りすぎと傾きという失敗を防ぐ
面直しは失敗しにくい作業ですが、損をするパターンはいくつかあります。知っておくだけで避けられるので、順に挙げます。
ひとつめは削りすぎです。面直しは、いちばん低いところの高さまで全体を下げる作業にほかなりません。つまり削れば削るほど砥石は薄くなり、寿命は確実に縮みます。鉛筆の線が全面から消えたら、そこで手を止める。「もう少し念のため」がいちばん高くつくと覚えておくと安全です。逆に言えば、こまめに当てて凹みを浅く保っておくほど、一回あたりに削る量も減ります。
ふたつめは、傾いたまま平らにしてしまう失敗です。面としては平らでも、砥石全体が斜めに削れている状態を指します。原因は片手だけに力が入るくせと、作業台のがたつき。前後方向にしか動かさず、上下も入れ替えないまま長時間削ると、この形になりやすいんです。対策は先に触れたとおりで、縦・逆縦・斜め・逆斜めをひと巡りで回すこと、そして水平で動かない場所に置くこと。この二つでほとんど防げます。
みっつめは、面直し砥石側の管理漏れです。道具の同じ場所ばかり使っていると、道具のほうが凹みます。当てる位置をずらして全面を使う、溝が浅くなったら交換を考える。これを忘れると、いつのまにか「凹んだ道具で凹みを作っている」ことになりかねません。
よっつめは、地味ですが後始末です。面直しで出る泥は砥石の粉そのもので、量も研ぎのときの比ではありません。そのまま排水口へ流し続けると、沈んで詰まりの原因になります。目皿にネットをかけて受ける、洗い桶に溜めて上澄みだけ流し、沈んだ粉は乾かして燃えないごみとして捨てる。集合住宅なら特に気をつけたいところです。屋外の水場でやるなら、地面に流しっぱなしにしないよう受け皿を用意しておくと後が楽です。
最後に保管です。面直しの直後は砥石が水をたっぷり含んでいます。濡れたまま密閉したり、日の当たる窓辺に置いたりすると、割れやひびを呼びます。洗って、拭いて、風の通る日陰でしっかり乾かしてから片づける。ここまでを一連の作業として区切ると、次に使うときに嫌な思いをしません。
砥石の面直しのやり方を続けた先
ここまでの流れを、もう一度短くまとめます。まず金属定規を当てて光の筋を見る、そして鉛筆で格子を描いて削りながら確かめる。この二段構えで、いま面直しが必要かどうかと、凹みがどんな形かがわかります。道具は専用の面直し砥石が素直な出発点で、面直しの回数を増やしたい、あるいは深い凹みを短時間で片づけたいならダイヤモンドタイプ。耐水ペーパーとコンクリートブロックは、条件を理解したうえでの代用と位置づけるのが安全です。
削り方は、水を含ませて、平らな場所に固定して、縦・逆縦・斜め・逆斜めを回しながら擦る。線が消えたら止めて角を落とし、洗って陰干しする。間隔は荒砥ほど短く、仕上げ砥は減りより平面の精度を優先して研ぐ前に軽く当てる。あとは、削りすぎ・傾き・道具側の凹み・泥の後始末という四つの落とし穴を避けるだけです。
迷ったときの優先順位も添えておきます。道具をどれにするか決められないなら、まず金属定規を一本用意して、手持ちの砥石が今どんな状態かを見るところから始めてください。凹みが浅ければ専用の面直し砥石で十分足りますし、定規の下から明らかな光の帯が見えるほど落ちているなら、削る量が多いのでダイヤモンドタイプを検討する価値があります。道具は砥石の状態を見てから選ぶほうが、無駄な買い物になりません。順番を逆にすると、買ったのに出番が少ない、あるいは買ったのに全然進まない、のどちらかになりがちです。
私が面直しを毎回の習慣にしてから変わったのは、切れ味そのものよりも研ぎの手応えでした。刃が砥石に吸い付く感覚がはっきりして、カエリの出る場所も揃うようになる。研ぎの上達が止まったと感じている方は、腕を鍛える前に土台を平らにしてみてください。研ぎの動作そのものに不安が残るなら、包丁の研ぎ方を初歩から追った記事のほうに手の置き方から書いてあります。平らな砥石と落ち着いた手つきがそろえば、家の包丁は驚くほど素直に応えてくれますよ。
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